ニコチアナの花
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「わあ!やっぱり思った通り!最高にお似合いですよ!」
「えっと…どうも。」
かもめはドレスだけでなく、ヘアメイクも軽く施されたらしく、白く柔らかな布に包まれて、薔薇色に染めた頰と唇は、毎日一緒に居るのに、目が離せないほど美しかった。ぼーっと見惚れていると、胸に小さくパンチをお見舞いされる。
「なんとか言ってよ。」
「綺麗だよ。お姫様見てェだ。」
素直に答えれば、なお一層照れて、声にならない声を上げて、胸をポカポカと叩いてくる。その腕の手首のあたりを掴んだ。シルクの感触が指にこそばゆい程心地よい。
「もっとよく見せろよ。」
顔を近づけると、はっとしたように目を背ける。いつになっても戯れに慣れないその姿が、可愛らしくて虐めたくなる。そんなことを考えれば、思い直したようにこちらを見つめ返して、困ったようにふっと微笑むのだから、本当に油断ならない。
「回って見せてくれ。」
かもめは黙って腕から離れて、ゆっくりと回って見せた。ドレスのひだがふわりと揺れて、シャラシャラと微かに衣擦れの音がした。
「どうかな?」
「あぁ、似合ってる。」
くすくすと笑ってかもめは腕の中に飛び込んで来た。ほんのりと蜂蜜のような甘いコロンが鼻腔をくすぐる。
「…次元がそう言ってくれるなら、着て良かった。」
どんな顔をしているのか気になって、思わず顎に手を添える。見つめ合う一瞬の沈黙。
「せっかくですから写真を撮りましょう!」
営業の女が溌剌と沈黙を破り、慌てて少し距離を取った。写真、という言葉に身構えるが、女が取り出したのは、ちょっと時代遅れなインスタントカメラ。まあ、これなら履歴も残らない。
同じことを心配しているだろうかもめに、照れと呆れとが混じった、なんとなく野暮なため息と囁いた。
「いいんじゃねぇの?」
「さぁ、もっと近づいてください!」
帽子を胸元に当てて、女に言われるがまま、かもめと肩を寄せた。
シャッターとストロボの乾いた音が、まるで一瞬を切り抜くように、空気を震わせて響いた。
***