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ニコチアナの花

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元爆弾ネズミの真名

「どうしたんだ五ヱ門。こんな所に呼び出して。一緒にバカンスでも洒落込もうってのか?」

五ヱ門が呼び出したオリエンタルなカフェテラスで、藤編みの低いソファに腰掛けた。

「まさか。二人に折り入っての相談だ。」

かもめはキョロキョロと辺りを見回した。

「今日はルパンは一緒じゃないのね。」

「ああ、今回はルパンには遠慮してもらわねば。…この離島が観光地開発されたのは、ほんの数年前だというのはご存知か?」

「あぁ…確か、4、5年前はホテルなんぞひとつもない島だったらしいな。あるのはただ広大なタバコ畑。」

「左様。元々少数民族の島だったが、島の広さと気候に目をつけられ、安い賃金でタバコ栽培をやらされていた歴史の方が長い。」

「その少数民族の人たちはどこに行っちゃったの?」

「もちろん手品のように消えるわけじゃなし、今もこの島に住んでいる。」

ここで五ヱ門は地図を広げた。

「観光地として開かれているのは実はこの島のほんの一部だ。島の反対側には、タバコ畑を挟んで、未だ原住民のが暮らしている。観光地化して、元々タバコの栽培に従事していた男手は開発工事に駆り出された。」
「女手、は?」
「島の…こちら側の風俗街、あるいはこの島の実権を握っている、クリストフ財閥の元だ。」
「きな臭い匂いがしてきたな。」
「どうして人は人間を支配したがるのかしら。」

グラスの中で、溶けた氷がカロ…と音を立てた。

「…原住民たちは何故、大人しく従事しているの?」

「この島が、海に囲まれていながら漁業に恵まれなかったことが主な理由だな。海流の影響で海の外に出るのは限られたルートでしか出来ぬ。おまけに島全体がぐるりと鮫の生息地となっている。タバコ畑の参入は、文字通り彼らには助け船だった訳だ。」

「気持ちのいい話じゃねぇな。」

「財閥は、広大な土地と、素直で無垢な労働力を一挙に手にしたって訳ね。」

「表向きはあくまで対等な取引関係が謳われているが、実際は酷いものだ。奴隷とその主人に他ならない。…ここで本題だが、その少数民族の頭が、クリストフと入籍しようとしている。」

「ありゃま。…それは本人の意思なの?狙いがあってのこと?」

「拙者は嘗て、この島で修行をし、その際に世話になった。とても本人の意思とは思えぬ…。そして策略としても不審なのだ。何故ならこの島の法では、婚姻関係が結ばれた場合、財産はすべて夫側の所有権となる。」

「そんな横暴な法が?」

「理由は、この島が代々女系の民族だからだ。男の数が著しく少ない。」

やっと合点がいって、ため息が溢れた。

「この件にルパンを呼び寄せない理由ってのはそれか?」
「左様…女性が多い、だけではない。この島の女性は、その、性に奔放、というか…。」

五ヱ門は初心な女のように言葉を選んだ。しばらくもじもじとした後で、きっぱりと言い切る。

「…表向きはクリーンなリゾート島だが、一皮剥けば爛れた遊郭島なのだ。ここは。」


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