ニコチアナの花
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五ヱ門が指定したのはとある離島で、観光地として有名なリゾートアイランドだった。普段の仕事なら、帰りの足も考えて、自前でクルーザーを用意して行くところだが、かえって目立つ恐れもあるので、旅客船に席を取った。
だだっ広い甲板には、休暇に浮かれた家族連れが目立つ。船尾の、少し日陰になった喫煙スペースで煙草を燻らせば、ウミネコと子供たちの甲高い声がかすかに聞こえる。
かもめは白波をぼんやりと眺めていた。その姿をじっと見ていると、視線に気付いて、首を傾げて笑った。
不意に、パタパタと靴底のさぞ柔らかそうな軽い足音が近付いて来たかと思えば、小さな子供が、かもめの膝にぶつかって転んだ。倒れた子供をやさしく助け起こして、かもめは言う。
「大丈夫?」
袖口で見知らぬ子供の顔についた泥を拭いながら、やさしく叱るような声を出した。
「ここは子供が来る所じゃないのよ。」
「こわいおじちゃんがいる。」
子供が小生意気にこちらを指差した。
かもめは弾けるように笑った。
「そうそう、怖いおじちゃんがいるからね。ママはどこかな?」
「ママ、いなくなっちゃった。」
「そっか、じゃあ探しに行こうね。」
甲板に子供の手を引いて乗り出せば、遠くにおろおろする夫婦らしき二人が見えた。少し近付けば、二人はその子の家族だったらしく、子供はかもめの手を振り払って駆け出した。
「ママ!!」
母親らしき女が子供を抱きしめて、父親らしき男がこちらに深々とお辞儀をする。母親に抱かれたまま、大きく手を振る子供に、眩しそうに目を細めて、かもめは小さく手を振った。
「随分家族連れが多いのね。私たち、浮いてるみたい。」
その笑顔がどことなく寂しそうに見えて、無粋な質問が口をついた。
「恋しいか?」
一瞬の間があった。
「…家族のこと?」
***
だだっ広い甲板には、休暇に浮かれた家族連れが目立つ。船尾の、少し日陰になった喫煙スペースで煙草を燻らせば、ウミネコと子供たちの甲高い声がかすかに聞こえる。
かもめは白波をぼんやりと眺めていた。その姿をじっと見ていると、視線に気付いて、首を傾げて笑った。
不意に、パタパタと靴底のさぞ柔らかそうな軽い足音が近付いて来たかと思えば、小さな子供が、かもめの膝にぶつかって転んだ。倒れた子供をやさしく助け起こして、かもめは言う。
「大丈夫?」
袖口で見知らぬ子供の顔についた泥を拭いながら、やさしく叱るような声を出した。
「ここは子供が来る所じゃないのよ。」
「こわいおじちゃんがいる。」
子供が小生意気にこちらを指差した。
かもめは弾けるように笑った。
「そうそう、怖いおじちゃんがいるからね。ママはどこかな?」
「ママ、いなくなっちゃった。」
「そっか、じゃあ探しに行こうね。」
甲板に子供の手を引いて乗り出せば、遠くにおろおろする夫婦らしき二人が見えた。少し近付けば、二人はその子の家族だったらしく、子供はかもめの手を振り払って駆け出した。
「ママ!!」
母親らしき女が子供を抱きしめて、父親らしき男がこちらに深々とお辞儀をする。母親に抱かれたまま、大きく手を振る子供に、眩しそうに目を細めて、かもめは小さく手を振った。
「随分家族連れが多いのね。私たち、浮いてるみたい。」
その笑顔がどことなく寂しそうに見えて、無粋な質問が口をついた。
「恋しいか?」
一瞬の間があった。
「…家族のこと?」
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