ニコチアナの花
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
隠しているわけでも、演じてる訳でもなく、無いのだ。こいつには。どんな人間にも備わっている基本的な自尊心の様な何かが。
ぽっかりと抜け落ちている。
汚いもんか。どんなに体が汚れても、傷ついても。
それを説明する手立てがない、言葉がない。納得させられる理由がない。
泡をかもめの胸元に落として、自分ができる限り丁寧に体を撫でた。耳の裏から、爪の先まで。
かもめは困ったように身を竦めて、時々体を震わせていた。
「そんなに丁寧に触らなくても、私壊れたりしないよ。」
「黙ってろ。」
二人の生活が、かなり上手く行ったとしても、俺はこいつよりずっと早く死ぬだろう。
最も、こいつの死に目に会うのはごめんだが。
考えたくもない話だが、俺が居なくなった後で、こいつに遺してやれるものは何だろうと思う。死なないための渡世術か、銃の腕前か、財産か。
渡世術に関しては十分すぎるほどわきまえているし、こいつに銃は似合わない。財産はさして喜ばないどころか、拒否するような気さえする。情けない話、そう大層な財を持っている訳でもないが。
ならばせめて、こいつの心の隙間の部分をどうにか直してやりたい。自分を大切に出来るようにしてやりたい。
自分を卑下するような冗談を、まるで何でもないことのように口にする、小さな口を塞ぎたい。
「何のつもりか知らないけどさ、そんな風に触られると、私、その…。」
白い柔らかな体を磨くことだけに集中していると、その体の持ち主は、知らぬ間にすっかり顔を赤くして、瞳を潤ませていた。思わず笑いが溢れてしまう。洗いかけのくるぶしに唇を寄せると、女のつま先がぴくりと跳ねた。
優しくしつこく丁寧に触れていたから、ほんの少しの刺激が過度に体に響くらしい。眉間に皺を寄せ、ちゃぽ、と軽い音を立てて、つま先を湯船に隠した。呆れたように口を尖らせる。
「何かのおまじないなの?」
「さぁな。…俺ァ、お前に、幸せになって欲しいんだよ。」
「?…今が一番幸せだけど? このままおあずけにされないのならね。」
湯にふやけきった指が、自分の手を隙間に導いた。
「随分積極的じゃねぇか?」
「誰のせいだと思ってるの?…いじわるしないでよ。」
困ったように照れたように、眉を寄せる額が愛おしくて、濡れ髪を掻き分けてキスを落とした。
***