私を月に
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「この度は、急なことで…。」
私の顔が割れてなくてよかった。何回このお葬式ごっこをすれば良いやら。目にいっぱい涙をためたこの女、さすがの狂気。
「急なことじゃないわ、殺されたのよ。」
両手で顔を覆い、さめざめと泣く。多分この女が持ってるに違いないんだけど。私の男の古女房を。
「…これで晴れて、あなたは愛する男の元へ行けるじゃありませんか。」
「ええ…でも、そうね。愛がなかった訳じゃないのよ。彼にも。」
棺桶に眠る嘗てのボスは、綺麗に死化粧をなされてはいるが、眉間のど真ん中に弾丸の痕跡が見える。正確な狙いに鳥肌が立った。
「それに…二人の前に立ちはだかるものはまだ残っているもの。」
コツン、こめかみに冷たいものがぶつかった。
え?
「初めてあなたにあった時から、懐かしいタバコのにおいがすると思っていたのよ。」
やばい。やばいな。まずい。やばい。
「最近うちのファミリーと関わったお客さまで、屋敷にまで足を踏み入れたのはあなただけなのよね。」
顔は割れていなかった。ーーただ、私の奪還の手際の良さが仇になった。それだけなら理由に乏しいが。
染み付いた、タバコの、匂い。
視界が、真っ暗になった。
***