私を月に
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次の朝、あのファミリーのボスが死んだ。射殺だった。
モーテルの映りが悪いテレビで報道を見ていると、ムニャムニャとかもめが起き出した。猫のようにあくびと伸びをして、眠い目をこすっている。
「あいつ、死んだぜ。」
「やっぱりね。」
「どういうことだ?」
モーテルの小さな冷蔵庫から、パック入りの牛乳を取り出して、俺の膝の上に座った。ストローを突き刺して、ちゅうちゅうと吸いながらかもめは言う。
「有名な話ね。ーーーあるところに、三人家族がいました。旦那さんが不慮の事故で死んでしまい、未亡人になってしまった奥様は、そんなお葬式で不謹慎ですが、参列した旦那さんの友人と、どうしようもなく惹かれあってしまいました。次の日、子供が死にました。奥さんが殺したのです。さて、これはどうしてでしょう?」
「そりゃ…再婚するには娘の存在が邪魔だったからじゃないのか?」
「ぶぶー。」
「何だよ?」
昨日からもったいぶられてばかりだ。
「正解は、もう一度お葬式をすれば、また旦那の友人に逢えるからです。」
絶句すると、ぢゅう、とパックから口を離して、かもめは続けた。
「有名なサイコパスのテスト。ここまで言ったらわかるかな?自分が情けをかけた相手のこと。」
「あの女がサイコパスだったって?」
「厳密にはサイコパス…ではないけど、それに近い狂気を持ってる…検査したから間違いないよ、昨日の私の依頼主、今日死んだ人。」
ようやく合点がいった。納得はいかないが。こいつだけ全容が見えていた訳だ。
「奴…俺の銃、使っただろうな。」
ボス殺しの真犯人に仕立て上げられたって訳だ。
「謂れのない恨みを買うのがそんなに好き?」
「馬鹿野郎。好きで買ったんじゃねぇ。」
「しょっちゅう買ってるじゃない。コレクションしてるのかと思った。」
タバコに火を付け、苛立ちに任せて煙を吸い込む。あのファミリーをまるっと敵に回しちまったって訳か。
かもめの男運のなさに呆れていたが、自分の女運の悪さも大概だ。やれやれ。どうしたもんか。
空になってパックをゴミ箱に放り投げて、かもめは不敵に微笑んだ。
「実は私もコレクションしてるものがあるの。見たい?」
***