私を月に
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依頼主は変わったが、昨日に引き続き同じ仕事。だが、今日は捕虜相手じゃない。とあるマフィアの中で裏切りを働いた仲間相手。何か隠しているようなので、原因を探り出してほしいとのこと。昨日のようにすんなりとはいかない。出来るだけ丁寧に、と言われているから、手荒な真似はできないし、何より今回の被験者は女性だ。しかし、2時間くらい話したところで、依頼主の話と辻褄の合わない部分があった。休憩がてら、依頼主に声をかける。
「彼女、ただの仲間じゃないんじゃないですか?」
「…彼女がそれを?」
「彼女はむしろ懸命にただの仲間のフリをしています。…正直に事実を教えて頂かないと、いつまでもあなたの言う真実にはたどり着けませんよ?」
依頼主は立派な口髭を蓄えた、この辺り一帯を締めるマフィアのボス。プライドの高そうな男だ。
「守秘義務は守ります。」
「…彼女は、私の愛人だ。」
そんな大事なことは黙ってんなよな、と思うが、ボスの体裁で言えなかったのだろう。彼女の好みの食べ物を聞き出し、休憩を終えた。
拷問室…というには小綺麗な部屋だ。ふかふかのソファも、テーブルだってあるし。
「疲れたでしょう、お茶にしませんか?」
声をかけて、女性にかけられた手錠を外した。体が近付いた瞬間、女性が訪ねてくる。
「あなた…煙草を?」
「いえ、連れが…匂いますか?」
輪切りのドライオレンジが並んだダークチョコレートのケーキ。包みを開くと、女性はぱっと顔を輝かせた。
「カウンセリングは抜きにして、女同士で話しません?…随分面倒な男とお付き合いしてたみたいで?」
女性はすっかりと警戒を解いて、先程までとは別人のようによく話し始めた。ごめんね、お姉さん。私は、これも仕事の範疇なんだ。
彼女は自身と愛人関係にあるボスへの愚痴を交えつつ、経緯を説明した。
要するに、外に好きな男ができて、ボスとの愛人関係を切りたくて反逆行為を行ったらしい。まあバレたら即刻殺されるパターンのやつだな。
「勇気がありますね。」
「違うのよ、恋に落ちてしまったの。本物の恋に。」
原因ははっきりした、とはいえ、あのプライドの高い男だ。愛人を愛人とも言えなかった器の小さな。なんと説明して納得させよう?
煙草を吸ってもいいかしら?と問いかける彼女に、ええどうぞ、と答えれば、彼女が懐から出した赤い小箱に、何となく嫌な予感がした。幾度となく彼のおつかいで買った、見慣れたポールモール。
***