パピヨン・ボヤージュ
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女学院の制服に身を包むと、まるきり上品なティーンエイジになってしまって、自分の体の幼さに呆れた。
「支度できたか?」
声をかけてくる次元に、思わず小さく口笛を吹いた。上品な鼠色のスラックスに、落ち着いた臙脂色のベスト。切り返しに入ったカーキの差し色が、かっちりしたスタイルを古臭くなく見せる。アームバンドは着尺のせいじゃなくてお洒落でつけているんだろう。髪は後ろに結んでいる。いわゆる執事って感じの燕尾服ではなけれども、白い手袋がいかにも執事って感じだ。
「ヒゲは剃らなくていいの?」
「勘弁してくれ。帽子もないのに…お前俺のアイデンティティをなんだと思ってる?」
「今日は猫背にもできないしね?」
黒いネクタイを緩めながら次元が答える。
「全くやってらんねぇよ。臭いがつくからタバコも吸えねぇ。…お前、獲物は?」
プリーツのついた茶色いスカートをピラリとめくって内腿のホルスターを見せると、次元は顔をしかめた。
「お前…そう言う所だって。」
依頼主の手配したリムジンに乗って、女学校に潜入した。周囲はさすがに若い女の子たちばかりだ。若い女の子たちの甘いコロンと、飾られた花々が瑞々しい香りを放っている。
私もいつからかタバコの匂いが染み付いた女になってしまった。とはいえ、私が甘い香りを漂わせていた時代なんてないのだけど。こんな青春私にはなかった。いつだって私の体を纏うのは、ホコリと鉄と火薬の匂いだ。
執事に扮した次元に、いつもよりもっと丁寧にエスコートされて、情けなくドキドキする。ただのお芝居なんだけど。
「お嬢様、顔が引きつってるぜ。」
「うるさいわよセバスチャン。」
見張りに次元を立たせて、手に革手袋をはめた。理事長室のブレーカーを切り、セキリュティをダウンさせる。付け焼き刃なピッキング技能だったが、なんとか鍵を開けられた。ターゲットが入っていると思しき金庫は旧式の回転鍵で、内心ガッツポーズをする。聴診器を当てつつ探り、ビンゴ。
金印のダミーをすり替えて、元の通りにしまう。部屋の鍵も閉めて、ブレーカーをあげる。
ほんの5分程度のことなのに、体は一日走り回った後のようにくたびれた。やっぱり、泥棒は向いてない。手袋を外すと、手に汗がびっしょりだった。
「済んだかい?お嬢様。」
「終わったわよ、セバスチャン。」
「お前ねぇ、すべての執事がセバスチャンだと思ったら大間違いだぜ。」
「あらセバスチャン、言葉尻が乱れてますわよ。」
***