パピヨン・ボヤージュ
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日がとっぷりと暮れて、モーテルに入ってからも、かもめの顔は曇ったままだった。
強引だっただろうか、急ぎすぎたのだろうか。
二つあるベッドの上に、別々に背中合わせで横になった。服も着替えずに。
二人になれば悲しみが半分、喜びは2倍に、とはよく言う口上だが、悲しみが2倍で、喜びが半分、なんてことも、まあ、無くはない。こんなこと考えていてもキリがない。キリがないのに、沈黙がこの堂々巡りから連れ出してくれない。
「やめた。」
不意にかもめが呟いた。視線を向ければ、にっこりと微笑む。恋しくてたまらなかった笑顔に、こちらも笑えてくる。
「考えすぎてお腹すいちゃった。」
「何か食いに行くか?」
「もう今日はモーテルから出たくないよ…そこにファストフードのお店があったでしょ?」
店に向かう短い道を歩きながら聞く。モーテルのライトが、二人の影を作った。こいつは影まで小さい。
「一体何をそんなに考えてたんだ?」
「考えても仕方がないようなことをね。起こるかもしれない色んなことを。」
「やめたのか?」
「うん、もうやめた。だってやっぱり、一緒に居られる時間を、愛してるから。」
不意打ちに甘い言葉を放たれてーー本人はそんなつもりはないらしいが。自動ドアを先に越された。急に立ち止まった自分を小首を傾げて待つ彼女に、呆れてずれた帽子を直した。
***