エピローグ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
本当なら、衝動のままに抱いてしまいたかったが、大事にしたくて、ぐっと堪えた。
自分の気持ちを今全部伝えたら、こいつは壊れてしまう気がする。少しずつ与えたい。それくらいは大人でいさせて欲しい。
涙が引くまで公園をぐるぐると散歩する、あまりにも青臭いデートだった。それでもかもめは幸せそうで、なんなんだこいつは。この生き物は。
静かな海辺の小さなレストランを予約していた。オープン席で、波の音を聴きながらグラスを傾ける。ぬるい風が頰を撫でた。
食事のひとつひとつに甘くため息をついた目の前の女は、デザートのジェラートをいたく気に入ったらしく、熱心にスプーンを舐めている。俺の分の皿を寄せてやると、子供のように微笑んだ。
「さいこうの1日だったな。」
「そうかい。そりゃ良かったな。」
「こんな日が毎日でもいいね?」
「泣きながら公園をぐるぐる回るのがそんなに楽しかったか?」
「意地悪言わないでよ、嬉しかったんだもん。」
かもめが膨れて答える。
「こんなにステキな日は、お返しをしなきゃね?…何が良いかな、大したものはあげられないけど、私が持ってるものなら、あげるよ。なんでも。」
「さてね。もう貰ったようなもんだしな。」
「何かあげたっけ?」
「予約したようなもんだろう。」
チョーカーを指でなぞると、かもめは頰を赤くした。
「ずっと付けてろよ。」
「言われなくても。」
ぶつかった視線に、かもめが恥ずかしそうに視線を落とすので、顎に手を添えた。
「…いいか?」
俺の手首に小さな手を添え、コクリと頷く。手のひらの中の小さなネズミ。
「いいよ、もう全部、次元のものだから。」
「これから少しずつ貰うからな、覚悟しとけよ。」
重ねた唇からは、淡くレモンが香って、いつの日かの棒突きキャンディを思い出させた。
***