エピローグ
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あれから日本を離れて、数週間。
大騒ぎになったイタリアだったが、首都圏を離れれば何事もなかったかのように穏やかな日々が流れている。それぞれの仕事を後始末して、やっと一息ついた頃、わざわざおしゃれしてから会いたいから、と、同じアジトから時間をずらして待ち合わせ。
待ち合わせ場所には、もう既に人影があった。普段のぶかぶかなつなぎと相反するような、体に添うような黒いワンピース。裾が風にはためいて、白い足がちらちらと露わになる。薄く化粧をした顔は、完全に一人の大人の女性の表情で、一瞬見とれて、声を掛けるのが遅れた。見知らぬ若い男数人が先に声を掛ける。
「お姉さん、お一人ですか。」
お姉さん、というのにピンとこなかったようで、かもめはぼんやりしていたが、周囲に自分以外の人がいないのを確認すると、吹き出した。
「私に言ってるの?」
「ええ、綺麗なお姉さん。」
「そりゃどうも。あいにく人を待っているところなの。」
「待ち人が来るまででもお話しない?」
「すぐに来るから、構わないで。」
若い男たちは爽やかな見た目に反してしつこいらしい。吸いかけのタバコを踏んで、一歩前に出ると、かもめがこちらに気付いた。
「次元。」
「うちの連れになんか用かい?オニーサン。」
これ見よがしにかもめの肩を抱き寄せると、男たちは舌打ちをして去って行った。クスクスと子供のように笑い続けるかもめ。
「ナンパされちゃったよ。生まれて初めて。」
「悪いな、待たせちまったか?」
「ううん、思ってたより早く着いちゃった。次元こそ早いじゃない?約束の10分も前だよ。」
「女を待たすわけにいかねぇだろ。」
相変わらず首を覆う服を着ている。首元をちょいちょいと指差し、聞く。
「…取れたってのに、まだそんな服着てんのか?」
「だって不細工なんだもん。」
襟元を捲って見せると、火傷のような傷跡が痛々しく残っていた。
「これは…消えねぇのか。」
「何年もしてたから。これくらいは仕方ないよね。あの頃から考えれば、首が繋がっていることが奇跡だし?」
相変わらずシニカルな冗談混じりに答える。
なんてこった。もう何も縛られるものは無くなったのに、縛っていた跡は簡単には消えない。
「さ、行こう。…で、デートってどんなことするの?」
無邪気に首をかしげるかもめと腕を絡めた。
「お前、本当に何にも知らねぇのな。」
***