緋色の終焉
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すっかり寝入ってしまった。
優しく肩を揺すられて、いつかもこんなことあったっけ。と目を擦り擦り開ければ、見慣れたヒゲが目の前にあってギョッとする。胸元にもたれかかって眠ってしまったらしい。狭いヘリの中だったことを忘れて、うわ、と飛びのいて、頭がごつん、とぶつかった。そんなに驚くなよ、と小言を言われる。
「初めてじゃないだろう。」
「前は膝だったもん。」
「さて、着いたぜ。」
「着いたって、どこに?」
降りてみな、と促されて地上に立てば、懐かしい景色に息を飲んだ。正直、良い思い出は一つもない。懐かしさと苦い記憶が蘇る。私のかつての仕事場。採掘現場。
「足元気を付けなよ。」
切り立った崖を覗き込めば、足元の石がパラパラと落ちた。どこまでも鉱物を意地汚く切り抜かれたそこは、地球の中心にも届くのではないかと思えるほど深い。
「さて、かもめちゃんが言ってた本当の理由ってやつ、教えてくんねぇかな。」
「…そのことでわざわざここに?」
「それだけじゃねぇよ。外すんだ、これを。」
次元の無骨な指に首輪を撫でられる。
正気?
ルパンと五ヱ門を見れば、自信マンマンに頷いた。
「旧式の爆弾だ。回路が切れてから爆発するまでにちょっとタイムラグがあるんだな。長くて3秒、短くても1秒以上はある。」
「でも、この鋼鉄製の首輪だよ?ゆっくり切ってる暇なんて…。」
「拙者に切れぬものはない。」
そっか、この人天井ぶち破ってたっけ?
「んで、次元の早撃ちは0.3秒。最速で0.2秒。ま、俺もそれほどまでじゃないが。0.5秒くらいか?」
「…切って、その破片を撃ち抜くって言いたいの?」
「五ヱ門が真っ二つにした後、左を次元、右が俺。」
人間業じゃないよ。でもこの人たちだから、絵空事を言っているんじゃないって分かる。
「地中に埋まった爆弾は?」
「かもめ殿、崖の底の方が見えるか?」
暗い底に目を凝らすと、かすかにだが六角形の箱のようなものが見える。
「拙者が掘り出し、防弾に防弾を重ねた特殊ケースに封じたのだ。」
「まあちったぁ揺れるかもしんねぇが、地図から街が消えるほどじゃない。」
「…とちったら皆死ぬよ?」
「言ったろ、俺らは一蓮托生。」
ため息が出る。本当に酔狂な人たち。
「んで、理由ってやつは?」
「後でね。みんなが無事に生きてたら。」
「いいじゃねぇか、最後かもしれねぇってのに。出し惜しむなよ。」
銃を構えたルパンに示されて、崖を背にして立つ。
「死ぬかもしれない子供を前によくそんなこと言えるね?」
「子供扱いすると怒るくせに。」
「でも、何にも知らないんだもん、私。子供みたいなものだよ。海の冷たさも、お酒の味も、恋も、何も知らない。ずっとこの輪っかに縛られて生きてたから。」
五ヱ門が刀を構えた。
「ずっと投げやりに生きていたよ。…でも今初めて、こんなに強く思う。死にたくないって。」
その隣で、次元が銃を構える。
「ねぇ次元、もし生きて帰れたらね、」
帽子の下の鋭い瞳と目があった。
「デートしてくれないかな?一度だけでいいから。」
***