物語は突然に
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海辺のカフェテラスはあまり人気が無かった。
お互いしか目に入っていないようなカップルが1組。スーツ姿で新聞を広げた男の2人組。スーツの男達はどうにもカタギじゃなさそうだ。ほんのりと火薬の香りがするのを私は見逃さなかった。
売り子から買った素っ気ないアイスキャンデーを、だらしなくぺろぺろと舐める。随分懐かしい味だと外袋を眺めると、わざわざ日本から輸入したものらしい。店主が親日なのだろう。そう言えば店先の端々に親日っぷりが伺える。フォークとナイフにわざわざ箸を添えたりね。
このカフェテラスからなら時計台がよく見える。スイッチを押すのは私でないとして、仕事を最後まで見届けるのは私の主義だ。
「爆弾ネズミだぁ?」
耳に飛び込んできた男達の会話に思わずむせそうになる。
爆弾ネズミ
それは今の私の通り名だ。
もちろん自分から名乗ったわけじゃない。名乗るんならもっと可愛い名前にする。爆弾ウサギとか。可愛くないか。
もちろんほんとうの名前は別にある。
あるけど、きっともう2度と使うことはない。
もともとはただ採掘場で働いていた普通の人間だった。爆破によってエネルギー鉱物を採掘する仕事をしていた。粗雑な採掘による居住区域への粉塵被害、環境破壊の激しさに耐えかね、被害を最小限に留める爆破方法を提案したことが今の生活へのきっかけだった。
今はとある人間に雇われーーーもとい脅され、あらゆる文化的な建築物、きな臭い機密文書、ゴタゴタにまみれて政界の要人を始末している。
「兎も角も俺らの仕事に影響すんのは確かだな。」
「そゆこと〜。仕事中に建物潰されちゃあ流石の俺らもお陀仏よ。」
仕事って…こいつら一体なんの仕事を…
突然空を引き裂く様にビリビリと音が響いた。はじまったのだ。
あまりの音と地響きに、カップルが抱き合った。店の店主が慌てて様子を見に出てきた。エプロンの下の方に「大漁」と書いてある。なんだそりゃ。
時計台はみるみる沈み、初めからなにも無かったかの様に崩れ落ちた。
「こいつがうわさの?」
「そうらしいな。」
スーツの片方が手元のラジオを弄り始めた。
『…文化財…ある時計台が、何者かによって爆発されました。被害状況はただ今確認中で…』
「しっかし綺麗に崩れたな。」
「あれがあいつの手口なんだよ、分かっただろ?仕事がやけに丁寧なんだよ。職人気質っつーかなぁ。」
「お前は他の爆発も見たのか?」
「これで3か〜いめ!」
「そんなに見てりゃ、犯人とニアミスしてても…いや、爆弾なら遠隔操作で関係ないか…。」
「ん〜にゃ、案外近くにいるかも知んね〜ぞ? 仕事をキッチリやつ奴ぁ、最後まで仕事を見届けてるもんだぜ。」
派手なスーツの男と目があった。そしてにんまりと微笑みかけてきた。なんか、やばいかも。
最後の一口を頬張って席を立つ。
アイスの棒には、律儀に「アタリ」と書いてあった。
お互いしか目に入っていないようなカップルが1組。スーツ姿で新聞を広げた男の2人組。スーツの男達はどうにもカタギじゃなさそうだ。ほんのりと火薬の香りがするのを私は見逃さなかった。
売り子から買った素っ気ないアイスキャンデーを、だらしなくぺろぺろと舐める。随分懐かしい味だと外袋を眺めると、わざわざ日本から輸入したものらしい。店主が親日なのだろう。そう言えば店先の端々に親日っぷりが伺える。フォークとナイフにわざわざ箸を添えたりね。
このカフェテラスからなら時計台がよく見える。スイッチを押すのは私でないとして、仕事を最後まで見届けるのは私の主義だ。
「爆弾ネズミだぁ?」
耳に飛び込んできた男達の会話に思わずむせそうになる。
爆弾ネズミ
それは今の私の通り名だ。
もちろん自分から名乗ったわけじゃない。名乗るんならもっと可愛い名前にする。爆弾ウサギとか。可愛くないか。
もちろんほんとうの名前は別にある。
あるけど、きっともう2度と使うことはない。
もともとはただ採掘場で働いていた普通の人間だった。爆破によってエネルギー鉱物を採掘する仕事をしていた。粗雑な採掘による居住区域への粉塵被害、環境破壊の激しさに耐えかね、被害を最小限に留める爆破方法を提案したことが今の生活へのきっかけだった。
今はとある人間に雇われーーーもとい脅され、あらゆる文化的な建築物、きな臭い機密文書、ゴタゴタにまみれて政界の要人を始末している。
「兎も角も俺らの仕事に影響すんのは確かだな。」
「そゆこと〜。仕事中に建物潰されちゃあ流石の俺らもお陀仏よ。」
仕事って…こいつら一体なんの仕事を…
突然空を引き裂く様にビリビリと音が響いた。はじまったのだ。
あまりの音と地響きに、カップルが抱き合った。店の店主が慌てて様子を見に出てきた。エプロンの下の方に「大漁」と書いてある。なんだそりゃ。
時計台はみるみる沈み、初めからなにも無かったかの様に崩れ落ちた。
「こいつがうわさの?」
「そうらしいな。」
スーツの片方が手元のラジオを弄り始めた。
『…文化財…ある時計台が、何者かによって爆発されました。被害状況はただ今確認中で…』
「しっかし綺麗に崩れたな。」
「あれがあいつの手口なんだよ、分かっただろ?仕事がやけに丁寧なんだよ。職人気質っつーかなぁ。」
「お前は他の爆発も見たのか?」
「これで3か〜いめ!」
「そんなに見てりゃ、犯人とニアミスしてても…いや、爆弾なら遠隔操作で関係ないか…。」
「ん〜にゃ、案外近くにいるかも知んね〜ぞ? 仕事をキッチリやつ奴ぁ、最後まで仕事を見届けてるもんだぜ。」
派手なスーツの男と目があった。そしてにんまりと微笑みかけてきた。なんか、やばいかも。
最後の一口を頬張って席を立つ。
アイスの棒には、律儀に「アタリ」と書いてあった。