終わりのはじまり
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時計塔はみるも無残に崩れ落ちていた。…いや、やったの私なんだけど。
瓦礫の中を迷うことなくサクサクと進み、床を探る。あった。ここだ。
「ここか?」
次元が後ろから声を掛けてきた。色とりどりのタイルで敷き詰められた床。本来ならタイルを順番に押したら地下への階段が開く仕掛けなのだが、爆破によって歪んだ床は正常に機能しない。小さなダイナマイトでも仕掛けるかな?しかし床は空洞だから、下手すると派手に崩れるかも。
「重みで床が…。」
言いかけた途端、二人で立っていた床が崩れ落ちた。
瞬間、硬い胸板に押し付けられて、息ができなくなった。
鈍い衝撃の後、自分の真下からくぐもった声がする。
「…ったく、痛ってぇな…。」
事故でもこうして抱きとめられたことに幸福を感じてしまって、自分でも呆れてしまう。
長い腕の重さを背中に感じながら、上体を起こし、頬杖をついた。
「いい眺め。」
「お〜い。大丈夫か〜?」
上からルパンの声。
見上げると、小型の懐中電灯を放られた。パシ、とキャッチする。
「いちゃついてる暇ァねぇぞ〜」
「は〜い。」
よいしょ、と立ち上がって奥へ進む。私の下敷きになっていた次元も、しばらくすると起きてきて、後を追ってきた。
「驚いた。地下にこんな空間があったとはな。」
「プァーヴァル族の歴史書。全部禁書よ。」
壁中にぴっちりと本が収まっている。
「えーーっと…あった。」
重厚な赤の背表紙。すんなり見つかって安堵するが、その位置は高い。
「あれ、あの赤いやつ。…次元、届く?」
「さすがの俺でもちょっと無理だな。」
「…パパ、肩車して。」
「パパはやめろ。」
口とは裏腹に帽子の男は素直にしゃがんでくれた。懐中電灯を口に咥えて、肩にまたがる。いいよ、と肩を叩けば、いつもより数段高い視界にちょっとくらっとする。本の背に手が触れるが、まだ取り出せるほどの高さはない。
「もうひょっと。」
「…お前もういっそ肩の上に立てよ。」
「ふぇ、ふあ。」
急に足首を持たれてバランスを崩しそうになるが、それでも何とか立ち上がった。
「ふ、ふぉふぉひた!ふぉふぉひた!」
ふがふがと手が届いたことを訴えつつ、本を引きずり出すと、予想を超えた重さにぐらりと体が揺れた。口から懐中電灯が落ち、下の男に激突。
「〜〜〜〜〜ッッッ…。」
「あわわ、ごめんごめん。」
肩の上でしゃがみこんで、帽子越しに頭を撫でる。足を掴んでゆっくりと降ろされた。
「いやほんと、すみません。」
「…一冊でいいのか?」
「うん。この書庫で重要なのはこの一冊だけ。」
転がった懐中電灯を拾い上げ、落ちてきた穴を見上げると、ルパンがロープを降ろしてくれていた。
***