終わりのはじまり
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ルパンが買ってきたという服は、どれもこれも心もとない、羽のように軽い薄地の服でーー普通の女の子なら喜んで着るんだろうけど。十二時過ぎたら溶けてなくなるような服だった。そんな服の中でも浮くほどシンプルだった、黒いチューブトップとホットパンツを選んで、脚には膝まである黒いブーツを履いた。…無防備だ。やっぱり道中に店があったら作業着を買いに入ろう…。
車に乗り込むとルパンが軽く口笛を吹いた。
「あらま、セクシー。」
「それじゃあ期待にお応えして。」
私だってこのまま行く気じゃないよ。皮肉に返事をして、上に次元がくれただぶだぶのシャツを羽織り、胸の下でキュッと縛る。
「お前、それ着ていくのか。」
「ダメ?…このシャツ、気に入ったんだけど。」
なんとも言い難い顔をして、次元はタバコを車の灰皿に押し付けた。
「そんじゃあ行きますか〜。」
エンジンがいい音を立てて起きた。ルパンがアクセルを踏みしめる。後部座席にゆったりと座る私は、昏睡していた時の新聞や雑誌を手に取った。あらららら、世間的には、ルパンがルィティモ・プァーヴァルを復活させようと目論み、わたしを使役してメダルを強奪したことになってるのね。
「お前さんすっかり有名人になったな?」
助手席に座る次元が、帽子から目を覗かせてニヤリと笑う。彼の手元の新聞にも、私とルパンの写真がでかでかと載っている。
「全く辻褄あってないのにね? 途中まで爆破させて内密にメダルを回収していたのに、急に表立って犯行に及ぶなんて。」
「民間人は事件の整合性なんて気にしないのよ。今一番センセーショナルなのは、爆弾ネズミがお前さんみたいな若くて小さな女の子だったっつーことよ。」
「小さなって言うほど子供じゃないけど。」
ルパンがラジオのつまみを捻った。
『…州選挙に出馬を控えたイヴァン知事ですが、メダルを守ろうとした際に負傷しており…』
新聞記事の中のイヴァン・ペルヴィムに、あの日の記憶が蘇っていた。身体中を這い回ったあの不快感。無我夢中だったが、落ち着いた今になって強い吐き気が込み上げて来る。
「そういや、あいつの指を食いちぎったんだって?」
ルパンが面白そうに聞く。面白くも何ともない。
「食わないわよ。噛んだだけ。前歯にちっちゃい爆弾を仕込んでね。」
運転席に身を乗り出して、灰皿に残るちびたタバコを掴んだ。噛んで、不快感を紛らわせる。
「綺麗な肺が汚れるぞ。」
「別に…もう、綺麗じゃないし。」
***