終わりのはじまり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何が食べたい?と聞かれて、肉、と答えたら、随分驚いた顔をされた。
「タンパク質が足りないの。」
まだ頭がズキズキするが、少しずつ意識が冴えてきた。体を包む見覚えのない服からは、不思議と落ち着く匂いがする。次元の服かな。ふんふんと匂いを嗅いでいたら、ルパンがニシシ、と笑った。
「次元ちゃんが着替えさせたのよ。」
「あら、エッチ。」
自分の肩を抱きしめるように大袈裟に芝居をして答えると、苛立った声が返ってくる。
「馬鹿、止むを得ずだよ。泥だらけで居たかったか?」
帽子に隠れた顔がわずかに上気していて、からかい心が湧いてしまう。
「いいえ。どうもありがとう。女性の下着は黒が好きなの?」
次元は飲みかけのコーヒーを吹き出し、ルパンは膝を叩いて笑った。
「…買ったのはルパンだ。俺のチョイスじゃねぇ。」
「よっく言うぜ〜。俺が買って、次元ちゃんが選んだんだろ?」
「どっちにしたって、裸見られたんじゃ、もうお嫁に行けないわ。娶ってもらえる?」
「すっかり元気になったじゃねぇか。もう少し寝ててもいいんだぜ?」
「なぁなぁかもめちゃん。次元ちゃんたら、いじらしいのよ〜。かもめちゃんが起きるまで願掛けでタバコ吸わなかったんだぜ?」
飴の殻が重なる灰皿を見せながらルパンが声を上げる。
「少しは肺が綺麗になったかな?」
「血糖値が上がって死ぬとこだ。」
つまらなさそうにタバコを燻らせる広い背中が愛おしい。
愛おしい、反面で、自分はこの人たちと一緒にいていいのか、と疑問が湧いた。巻き込んでいる。確実に。
「…ね、ところで、私と行動を共にしてていい訳?多分GPSとか埋め込まれてるよ、私。」
首輪を指して問いかけると、ルパンが答えた。
「首輪に付いてんのなら撤去済み。爆弾解除だけは出来なかったがな。」
「体の中のことまではわからないじゃない。」
二人の視線が自分に集中するのがわかった。
「正直、私と行動するメリットはないよ。どこをどうイジられてるかわかったものじゃないもん。自分の体なのに。」
二人は顔を見合わせた。
ルパンがエホン、と咳払いをする。
「状況を整理するとだなぁ、かもめちゃんはイヴァンにひどいことをされて来た。」
ルパンに手で示されて、頷く。
「次元ちゃんは腐れ縁で、もうあいつとは手を切りたい。」
続けて次元が頷く。
「そして俺はあいつに濡れ衣を着せられてる。ここまでで俺たちの利害は完全に一致してるよな?…そんで奴は世界を7日で火の海にする兵器を完成させようとしている。これは何としても阻止しなくてはならない!」
ルパンが私の隣に座り込んで肩を抱いた。二人のおっさんに挟まれて、両手に花ならぬ…何だろうこれは。
「…わかるかな、かもめちゃん。俺たちは同じ目的に向かう仲間なんだよ。」
「…ちょっと信頼しすぎじゃない? 私が二重スパイだったら、とか考えないわけ?」
「裏切りは女のアクセサリー。女の裏切りを許した数だけ、男の勲章は輝くのさ。」
「ちょっと何言ってるかよくわかんないです。」
肩を抱くルパンの腕を振り払うと、次元がくくっと喉の奥を鳴らした。
「こう言う男なんだよこいつぁ。」
「…よくついていけるね。」
「ま、今更水クセェこと言うんじゃねぇ。俺らは一蓮托生だ。」
「何か少し勘違いしてそうだから言っておくけど、私別にいい子じゃないからね?…今までは命掴まれてたからお利口さんにしてただけで。」
「んな事ぁ分かってらぁ。ここにイイコは一人もいねぇ。」
次元と見つめ合う。まだお互いを知り尽くした訳じゃない、でも知り始めたし、分かり始めた。隣でルパンが腰を上げた。
「ま、どのみちじっとしていりゃアジトはバレらぁな。」
「移動するの? …それなら、少し、確かめたいことがあるんだけど。」
***