物語は突然に
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潮風が鼻先をかすめていく。この穏やかな街も、数時間後には恐慌の最中にあると思うと、もう何も感じないはずの胸がちくりと痛む。
美しい時計台。その昔、世界に空から灰が降った時、ここに集ったとある宗教徒は命を救われたとして、神の加護を求めるものが、今も後を絶たない。
ステンドグラスから溢れる色とりどりの光に染められ、傅き、祈りを捧げる若い女の教徒がいる。私は目を細めた。神様なんていないのに。
観光客が柱や扉をつい触れて確かめてしまうように、小さな爆弾をいくつも仕掛けていく。いくつも、いくつも。
螺旋の階段をゆっくりゆっくりとなぞって、頂上に届く頃には、すっかり身体中から汗が吹き出していた。
肌にまとわりつく衣類が気持ち悪い。首元まであるブラウスが汗でちくちくと痛い。襟元をそっと開くと、チョーカーと言うには無愛想な、鉄製の首輪が覗く。首にピッタリとついて離れない。痒い。
そっとピアス型の無線機に手を当てる。
「こちらネズミ、時計台爆破準備完了しました、どーぞ。」
『相変わらず仕事が早いな。少し遊んで帰ってこい。』
「うい。」
遊ぶって。なーんも楽しいことないよ。足早に階段を降りて、熱心に祈っていた教徒のお姉さんに声をかける。
「ちょっとおねーさん。上から見たらでっかくて黒い雲が出てたよ、酷い雨になるかも。早めに帰ったら?」
螺旋階段の上を指差しておねーさんに嘘の報告をすると、彼女は花が咲いたようにぱっと微笑んだ。
「それはどうもご親切に。今日は良いお日和だから、沢山シーツを干していたの。早く帰らなくっちゃ。」
そうしたほうがいいよ、と頷くと、彼女はまた傅いて、短く何かを祈った。
「あなたの幸せをお祈りしました。」
「そりゃどうも。」
私は思わず肩をすくめた。
アイスキャンデーでも食べに行こうか。こんな日は甘いものでも食べてないとやってられない。
美しい時計台。その昔、世界に空から灰が降った時、ここに集ったとある宗教徒は命を救われたとして、神の加護を求めるものが、今も後を絶たない。
ステンドグラスから溢れる色とりどりの光に染められ、傅き、祈りを捧げる若い女の教徒がいる。私は目を細めた。神様なんていないのに。
観光客が柱や扉をつい触れて確かめてしまうように、小さな爆弾をいくつも仕掛けていく。いくつも、いくつも。
螺旋の階段をゆっくりゆっくりとなぞって、頂上に届く頃には、すっかり身体中から汗が吹き出していた。
肌にまとわりつく衣類が気持ち悪い。首元まであるブラウスが汗でちくちくと痛い。襟元をそっと開くと、チョーカーと言うには無愛想な、鉄製の首輪が覗く。首にピッタリとついて離れない。痒い。
そっとピアス型の無線機に手を当てる。
「こちらネズミ、時計台爆破準備完了しました、どーぞ。」
『相変わらず仕事が早いな。少し遊んで帰ってこい。』
「うい。」
遊ぶって。なーんも楽しいことないよ。足早に階段を降りて、熱心に祈っていた教徒のお姉さんに声をかける。
「ちょっとおねーさん。上から見たらでっかくて黒い雲が出てたよ、酷い雨になるかも。早めに帰ったら?」
螺旋階段の上を指差しておねーさんに嘘の報告をすると、彼女は花が咲いたようにぱっと微笑んだ。
「それはどうもご親切に。今日は良いお日和だから、沢山シーツを干していたの。早く帰らなくっちゃ。」
そうしたほうがいいよ、と頷くと、彼女はまた傅いて、短く何かを祈った。
「あなたの幸せをお祈りしました。」
「そりゃどうも。」
私は思わず肩をすくめた。
アイスキャンデーでも食べに行こうか。こんな日は甘いものでも食べてないとやってられない。