憂鬱な首輪
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「まさか全部爆発させちまうなんて思わなかったけどな。あの要塞から流れる水路は4つだけで、もしかしたら〜と思って、一番遠い水路で待ってたのよ。かもめちゃんが出てくるんじゃないかと。」
そしたらヒゲおじさんが出て来て、驚いた〜と、おどけるルパンをバックミラー越しに見る。いつもは助手席に乗るところだが、気を失ったかもめを介抱するため、今日は後部座席だ。
ぐったりとしているが、脈はある。服は被爆してボロボロだが、体そのものに大きな外傷はないようで安心する。
あまりにボロボロのつなぎはいっそ脱がせたほうが良い気がして服を捲るが、中身が奇妙な格好であわてて服を着せ直す。一体なにがあったと言うんだ。結局何にも聞けていない。
ルパンには見せたくないな…と自分の背広を着せる。これもボロだが、無いよりましだ。
「しかし次元、ラッキーだったなぁ。かもめちゃんに見染められたのは。」
「どういう意味だ?」
「イヴァンの手中から無事に逃れた人間はいないんだぜ?」
「消されたってことか?」
「半分正解、半分不正解。半分は消されて、生きて手中を逃れた半分は精神が崩壊して出て来たって話だぜ。大男が幼児退行を起こしたり、自分を犬だと思い込んで出て来たりな。」
十中八九自分が抱えて出て来た女の仕業ではないかと見当がついてため息が出る。この子猫ならやりかねない。
「こいつは一体なんなんだ?」
「何とは何よ。女の子でしょう見るからに。」
「ただの女じゃないだろう。」
「俺も全部知ってるわけじゃないんだけどね。」
ルパンの知る限りの生い立ちを語られる。
元々は技術ある若者で、イヴァンに引き抜かれ、日本の担保のようにこの国に引き渡され、首輪と故郷の爆弾に脅されて汚れ仕事をやらされていた、と。
「外してやれねぇのか?」
不細工な首輪を撫でながら問う。
「古い爆弾でねぇ、それが。元々昔死刑囚につけるものだったのよ。」
死刑囚につけるものーーつまり、外れるようにはできていない。
「元々かもめちゃんがその独自の爆破技術を習得した理由ーー俺は、彼女が、爆破の粉塵によって自然や子供達に影響を与えることが許せなかったんだろうーーと思った。周囲の人間もそう認識していたようだったしな。」
「違うのか?」
俺の空腹を気にして飴玉持たせるような女だ。そんな理由で身を粉にしても、全く違和感はない。
「言ったんだよ、この子。「川とか海とか空気とか子供達とか、私にとってはクソどうでもいい」ってな。」
それでは、一体なんのために?
「この子は一体なんのために…こんなところに来ちゃったのかね。」
俺はこいつのこと何も知らない。
何もしらねぇんだ。
***