憂鬱な首輪
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水のせせらぎが鬱陶しい。
流れを伝えば外に出られる。
そういった背中の女の言葉を信じて道を辿るが、一向に出口が見えない。一人だったらなんのことはない道のりに、「一緒にはいけない」と言った切ない顔が蘇り、奥歯を噛む。
女はさして重くはない、むしろ心配になる程軽い。ちゃんと食べているんだろうか。邪魔なのはこのメダルの方だ。
女を肩に担ぎ直して、マグナムの球数を確認する。あと4発しかない。無駄撃ちはできないが。
メダルの箱にかかる錠前、つなぎ目に銃口を合わせて引く。1発では形を歪めただけだ。畜生。2発目、3発目でも完全には壊れない。足で数回蹴飛ばして、ようやく開いた。畜生、ほとんど丸腰で先に進むのか。
メダルをポケットにしのばせようとして、覚えのないものに触れる。棒付きのキャンディ。そういえば気を失う前、こいつ何かポケットに入れてやがったな、と思い出す。なんのためにこんなものを。一つ取り出し、口に運ぶ。甘ったるいレモンが口に広がり、間抜けにも自分の空腹を思い出す。やれやれ。いじらしい気遣いを。
空っぽになった箱を捨てて、女を横抱きにする。
この女…かもめ。首に爆弾をぶら下げたネズミ。
爆弾ネズミ…と、世間は呼ぶらしいが、俺に言わせりゃ猫だ。いたずら好きの人懐っこい猫。初めて会った時から散々絡んで来た。俺のことをおもちゃと呼んで、その一方で丁寧に手当てをし、俺の軽口を律儀に守って、タバコを買って来た女。
少しもそそるタイプではないのに、その健気さと、相反するような奔放な振る舞いに、興味を惹かれてしまう。
一体こいつはどこから来たのか。どうやって生きて来たのか。不意に夜風の匂いがした。外が近い。
ほっと息をついたのもつかの間、出口に人の気配を感じる。畜生。マグナムに手を掛け、壁際ギリギリを音を立てないようにジリジリと近寄る。が、人影は敏感にそれを察した。
「誰かいるのか?」
人影は聞き慣れた声を発し、張り詰めた緊張が一気に解けた。
「おんや、次元じゃねぇか。なんでお前がここにいんだ?」
***