憂鬱な首輪
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今日もまたルパンが一枚のメダルを見つけた、が、あの人は余裕なものだった。
「気がついたんだよ。我々がメダルを回収するより、ルパン三世にメダルを回収させて、奴を捉えた方が早いとね。」
ワインレッドのガウンを脱ぎながら、あの人が言う。全ての濡れ衣をルパンに着せるつもりなのだと直感した。どこまでも汚い男だ。マスコミはメダルの存在そのものに驚いている様子で、それもまたルパンの世間への誤解に拍車をかけるに違いない。
私はいつものように赤い扉の前で跪いていた。違うのは服装。色こそ清純な白で統一されたそれの形は、卑猥、淫猥。やっと薄い胸を隠すくらいのビスチェは、残酷なほど肌触りの良い生地でできていて、下半身には心もとないショーツが一枚。ガーターベルトに、すぐにも敗れてしまいそうなレースのソックス。足に合わない白いピンヒール。悪趣味にも花嫁のような薄いヴェールまで頭にかけて。花をいっぱい飾られて。
銀色に光る不細工な首輪に、今日は白いリボンを結ばれた。その白いリボンを手繰られて、一歩も踏み入れたことがないそこへ、一足一足導かれる。
「前祝に自分が育てた生娘を食らうなのは、中々乙な晩餐だとは思わないかね?」
全てが赤色で統一された部屋。天井が果てしなく高い。思わず見上げて、息を飲む。ベッドを取り囲むように佇む装飾品のように見えたものは、機械でできた獣。
きっとそう、これこそが、
『ルィティモ・プァーヴァル』
モチーフはグリフォンだろうか?兵器というにはあまりにも装飾的な美しさだった。目にはめ込まれた青い石が濡れたように光っている。泣いてるみたいだ。
この美しい獣が、七日で世界を火の海にするというの?
世界が火の海に染まる頃、きっとあの青い目は泣いている。不意に浮かんできた涙を悟られないように下を向いた。
首輪を引っ張りながら、あの人は独り言のように呟く。
「美しい…美しいぞ、その絶望に濁った瞳。」
昨日まで醜い醜いと罵り鼠を踏んでいた男が、踏んでいた鼠の死骸が女だと気付いて急に飾り立て始める、そんな滑稽な図。人が眠るには大きすぎる、血のように赤いベッドに、寸暇も惜しいと言うように乱暴に押し倒された。不快感がベタベタと体を這い回る。
気取られないようにあたりを見回した。
そもそもセキリュティの厳重なこの部屋だ。この部屋自体が金庫だと言ってもいい。…だから、きっと…。
ーーー見つけた。
あれがそうだ。枕元に飾られ、錠をかけられたガラスケース。そんなに大きくはない。小脇に抱えて十分に走れる、と、目算をつける。
あとは、そう、チャンス。
チャンスは、一度だけ。
***