風邪と夕陽の逃避行
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
民間療法の範囲だけど、彼が欲しがった時にいつでも出せるように、消化にやさしいたまごのスープや、ホットレモン用にレモンとシナモンを蜂蜜に漬け込んで用意した。喉に効くのだ。
具合を悪くして脱ぎ捨てた日のままになっていた背広の手入れをする。普段自分のことは自分でやる人だから、滅多に触ったことはない。
そういえば一緒にいて互いをそう世話することってないなと思い至る。お互いに自立したバランスの良い関係だと思う。実際スーツにアイロンを当てるのは、彼の方が上手っぽい。
見よう見まねで当て布をしながらかけたけれど、なんだか彼がやった時と仕上がりが違う。後で怒られなきゃ良いな、と、衣装ラックに掛けたところで、彼の咳払いが聞こえた。起きたらしい。時計を見ると、彼が寝付いてから3時間ほど経っていた。
「具合はどう? 何か食べれそう?」
ドアを開ければ、気だるげな彼が上体を起こした。
「無理して起きなくていいよ、私が持ってくるから。」
「畜生、介護されてる気分だな。」
「介護じゃなくて看病でしょう?…スープ作ったけど、ちょっと飲んでみる?」
力無く頷く彼の様子に、なんだか胸がゾクゾクする。普段強い人だから弱ってる姿が余計に魅力的に見えちゃうのか。
スープと白湯を持って彼の元へ戻る。
「あーん、とかして欲しかったりする?」
「ご遠慮願いたいね。」
「聞いて見ただけ。」
食欲はなさそうだけど、お腹は多少空いてたようで、彼はゆっくりスープを咀嚼した。
彼の食べるところは今まで幾度となく見ているけど、大概自分も何か食べながらなので、まじまじと観察する機会に恵まれて、なんとなく気分が高揚する。好きな人が食べている所って、なんか、いい。
「…んだよ、ジロジロ見て。」
「熱くなかったかなって。」
「熱かねぇが、味が薄いな。」
「調子が悪い時に味の濃いものはよした方がいいでしょう。」
一瞬彼の手が止まった。また何事もなかったようにスープを口に運ぶ。
食事を終えて、今日の分の薬を分けて、彼に渡す。全部飲んだのを見届けて、首元まで布団を掛けた。
「随分手厚い看病で。」
「早く良くなってくれなくちゃ困るからね。困ったら起こして。」
おでこに軽くキスをして、おやすみの挨拶をした。隣の部屋でベッドに入る。いつもより広くて冷たいベッドに、本当に早く元気になってもらわないと困るなぁと、小さなため息が漏れた。
***
具合を悪くして脱ぎ捨てた日のままになっていた背広の手入れをする。普段自分のことは自分でやる人だから、滅多に触ったことはない。
そういえば一緒にいて互いをそう世話することってないなと思い至る。お互いに自立したバランスの良い関係だと思う。実際スーツにアイロンを当てるのは、彼の方が上手っぽい。
見よう見まねで当て布をしながらかけたけれど、なんだか彼がやった時と仕上がりが違う。後で怒られなきゃ良いな、と、衣装ラックに掛けたところで、彼の咳払いが聞こえた。起きたらしい。時計を見ると、彼が寝付いてから3時間ほど経っていた。
「具合はどう? 何か食べれそう?」
ドアを開ければ、気だるげな彼が上体を起こした。
「無理して起きなくていいよ、私が持ってくるから。」
「畜生、介護されてる気分だな。」
「介護じゃなくて看病でしょう?…スープ作ったけど、ちょっと飲んでみる?」
力無く頷く彼の様子に、なんだか胸がゾクゾクする。普段強い人だから弱ってる姿が余計に魅力的に見えちゃうのか。
スープと白湯を持って彼の元へ戻る。
「あーん、とかして欲しかったりする?」
「ご遠慮願いたいね。」
「聞いて見ただけ。」
食欲はなさそうだけど、お腹は多少空いてたようで、彼はゆっくりスープを咀嚼した。
彼の食べるところは今まで幾度となく見ているけど、大概自分も何か食べながらなので、まじまじと観察する機会に恵まれて、なんとなく気分が高揚する。好きな人が食べている所って、なんか、いい。
「…んだよ、ジロジロ見て。」
「熱くなかったかなって。」
「熱かねぇが、味が薄いな。」
「調子が悪い時に味の濃いものはよした方がいいでしょう。」
一瞬彼の手が止まった。また何事もなかったようにスープを口に運ぶ。
食事を終えて、今日の分の薬を分けて、彼に渡す。全部飲んだのを見届けて、首元まで布団を掛けた。
「随分手厚い看病で。」
「早く良くなってくれなくちゃ困るからね。困ったら起こして。」
おでこに軽くキスをして、おやすみの挨拶をした。隣の部屋でベッドに入る。いつもより広くて冷たいベッドに、本当に早く元気になってもらわないと困るなぁと、小さなため息が漏れた。
***