桜色の季節
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異変に気付いて窓ガラスの割れた部屋に飛び込むと、血まみれのルパンとかもめがガラス片の中に倒れていた。仕事に邪魔が入ったのは明らかだ。警備が軽すぎるような気はしていたが、恐らく第三者からの狙撃だろう。ルパンは痛みに顔を歪めて、かもめは気絶している。機転を利かせてここまで逃げてきたのだから大したものだ。とにかくここに居ては狙撃した何者かに居所がバレてしまう。手近にあった台車にルパンを引きずり上げて、かもめを肩に担いだ。
車に二人を乗せて、とにかくアクセルを踏む。少し車を走らせた所で、相棒が苦痛に悶えながら目を開けた。
「ダッシュボード。」
場所を示すと、相棒はおとなしくダッシュボードを開いて、救急箱を取り出した。足を上げて自ら手当に入る。
「っ畜生…いってぇな!」
「足が繋がってるだけいいだろう。」
横目で銃創を確認するが、骨を折ったり、貫通しているわけではなく、足の側面を滑るように肉を削いだ傷跡だ。狙いは正確だが、タイミングの読めない三流の狙撃。どちらかといえば不時着した際の体の殴打が堪えていると見える。
「何者だ?」
「さぁなぁ。概ね俺たちのお宝を横取りしようとした小者だろう。」
「そのドサンピンにここまでやられてちゃ世話ねぇな。」
「返す言葉もねぇよ。かもめちゃんに助けられたな。」
バックミラー越しにかもめをみる。まだ意識は戻らないようだ。
「しかし、この仕事、ケチがついちまったな。どうする?」
「ああ。こっちは手負いが二人と来てる。だが横取りとあっちゃ、このルパン三世としては我慢ならねぇ。」
「まず狙撃してきた奴から洗い出さなきゃなんねぇのか? こりゃ骨が折れるぞ。」
「…その必要はないよ。」
後ろから細い声が聞こえた。目を覚ましたかもめが、助手席の間からのそりと頭を前に突き出してくる。
「必要ないって、どういう意味だい? 狙撃主に心当たりでもあるのか?」
「知らないよ。知る必要もない。今のルパン一家に私が居るってことを知らないくらいのモグリだもん。」
かもめはドレスの端をぺらりとめくった。ドレスには、銃撃で破れた跡がある。
「次元が行ってたら危なかったかもね。多分標的としての私が敵の予想より小さくて軽かったから、撃たれずに済んだんだと思う。」
「だが、メインのターゲット、今回の仮面は奴らの手中に…。」
かもめはおもむろに自分の胸元を探った。艶めかしいその仕草に思わず目をそらすと、かもめの手の中には、今回の獲物である、この国で一番美しい仮面が握られていた。
***