2匹の子猫
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ルパンはタバコを吸いがてら、ちょっと散歩に行ってくると言って出て行った。みんなで飲んだコーヒーの後片付けをしていると、後ろからぎこちなく腕が回った。嗅ぎ慣れたタバコの匂いがする。
「…どうしたの。」
恋しかったふれあいに、踊る心と跳ねる心臓を抑えながら、後ろの男に聞いた。彼は答えずに首元に顔を埋める。くすぐったさに甘い声が漏れた。
「…お皿が割れちゃう。」
「あんまり妬かせんな。」
彼が耳元で、低い声で囁いた。左耳から痺れるような低音で、うっとりと脳が溶けそうになる。
「…珍しいね、次元からそんな風に甘えるの。」
「いつもは俺より先にかもめが甘えるからな。」
「そうだっけ。」
「最近ちっとも甘えに来ないから、堪えたぜ。」
「ああ、だってそれは、タバコ切らしてたから。」
「どういう意味だ?」
思わず素直に答えると、彼は驚いたように声を荒げた。
「ここ数日タバコを切らしっぱなしにしてたじゃん? なかなか買いに行くタイミングがなかったし。次元、ちょっとイライラしてるかなーって、感じてて。」
「それがどうして俺を避ける理由になる?」
「避けてないよ。ただ、イライラしてる時にしつこく甘えられたりするのって、あまり気持ちのいいものじゃないと思ったから…我慢してた。」
「気を使って遠慮してたと?」
彼の慌てたような、呆れたようなその様子に、頷くことしかできなかった。彼はため息を吐く。本当にただのため息なんだけど、吐息が首筋にかかって甘く痺れる。
「お前、確か猫が好きだったよな?」
「う、ん。…何の話?」
「自分がめちゃくちゃイライラしてたとして、猫が甘えて来たらどう思う?」
時々突飛な話をするのは彼の癖だけれど、一瞬考えがついていかなくなる。一生懸命猫の姿を想像した。猫。黒い猫。真っ黒でちょっとふてぶてしい、次元みたいな猫。
イライラしてたって、ぶっきらぼうに甘えてきたら、可愛いに決まってる。
「かわいいなって思うとおもうよ。癒されて、イライラしてたのがマシになると思う。」
「俺が言いてぇのはな、そういうことだよ。」
「なんか、その言い訳、ずるいかも…。」
あまりに可愛い例え話に、思わず頰が熱くなった。びしょ濡れになった手に、次元の手が伸びたので、慌ててタオルケットで拭く。私の手を追いかけて空中に留まった手に指を絡めると、彼は眉間にしわを寄せた。何か的外れをしたかと不安になる。
「あれ、こうしたいのかと思ったんだけど、違った?」
「お前ね…。」
彼の耳が薄く赤くなっている。嫌ではないらしい。嬉しくなって絡めた手をぶらぶらと揺らした。愛おしい大きな手。人前ではとても恥ずかしくて、繋いだりもできないんだけど。
「甘え方下手だよね、次元。」
「悪かったな。」
「可愛いよ。この機会に練習したら?」
「偉そうに。」
彼は半分怒ったように、照れたように、私の腰をひょいと持ち上げた。
***