2匹の子猫
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
悪党3人でティータイムを終えると、相棒は気を利かせてか、態とらしくニタニタと外へタバコを吸いに行った。かもめは食器を洗いに再びキッチンへ立っている。小さな背中の後ろに立つが、どうしたらいいかわからない。あの男の軽やかな様子思い出しながら、ぎこちなく腕を腰に回した。小さな体が腕の中でぴくんと跳ねる。
「…どうしたの。」
嗅ぎたくてたまらなかった女の甘い匂いがする。いつもの落ち着く香りに、一瞬自意識が飛んで首元に頭を埋めた。かもめはくぐもった声を上げて首を小さく捩った。
「…お皿が割れちゃう。」
「あんまり妬かせんな。」
「珍しいね、次元からそんな風に甘えるの。」
「いつもは俺より先にかもめが甘えるからな。」
「そうだっけ。」
「最近ちっとも甘えに来ないから、堪えたぜ。」
「ああ、だってそれは、タバコ切らしてたから。」
「どういう意味だ?」
思いがけない答えに荒っぽい声を出してしまう。腕の中の子猫は不思議そうに、手に残る泡を流しながら続けた。
「ここ数日タバコを切らしっぱなしにしてたじゃん? なかなか買いに行くタイミングがなかったし。次元、ちょっとイライラしてるかなーって、感じてて。」
「それがどうして俺を避ける理由になる?」
「避けてないよ。ただ、イライラしてる時にしつこく甘えられたりするのって、あまり気持ちのいいものじゃないと思ったから…我慢してた。」
「気を使って遠慮してたと?」
要約すると、かもめはこくりと頷いた。
「お前、確か猫が好きだったよな?」
「う、ん。…何の話?」
「自分がめちゃくちゃイライラしてたとして、猫が甘えて来たらどう思う?」
「かわいいなって思うとおもうよ。癒されて、イライラしてたのがマシになると思う。」
「俺が言いてぇのはな、そういうことだよ。」
かもめはしばらく思案顔をしていたが、みるみる赤くなって手首のあたりで顔を隠した。
「なんか、その言い訳、ずるいかも…。」
衝動的に手を握ろうとすると、かもめの手はそっと指の間をすり抜けた。やんわりと腕の中から出て行くかもめに、やはり何かあるのでは無いかと一瞬肝を冷やすが、離れた位置のタオルケットで手を念入りに拭うとすぐに戻ってきた。伸ばしかけたままで空中に迷った俺の手を、しっかりと握って指を絡める。呆気にとられてぼんやりしていると、不思議そうに奴は続ける。
「あれ、こうしたいのかと思ったんだけど、違った?」
「お前ね…。」
かもめは目的もなく繋いだ手をぶらぶらと揺らして笑っている。
「甘え方下手だよね、次元。」
「悪かったな。」
「可愛いよ。この機会に練習したら?」
「偉そうに。」
どっかの悪党の笑い方が移ったように、口の端を曲げてにしし、と笑う。軽い苛立ちと、くすぐったさと、溢れる愛おしさに、腰を掴んで持ち上げた。
***