キスミー・クイック
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かもめの部屋の前まで来て、頭を掻く。つい最近まで自覚のない感情だったのだ。腹を決めて、ドアを開くと、ベッドに横たわるかもめがピクリと体を震わせた。狸寝入りの下手なやつだ。
「お前も回りくどいことするよな。」
「…私がそう言う奴だって知ってるでしょ。」
「ああ。嫌いじゃないさ。」
眠り姫のようにベッドに横たわるかもめの隣に膝をついた。閉じているまぶたがピクピクしている。面白くてつい笑ってしまう。かもめなりに勇気を振り絞ったのだろう。悪態をつく口調はいつもと変わらないが、その拳はシーツをきつく握って白くなっている。体も僅かに震えて、緊張が伝わってくる。赤く染まった滑らかな頰を撫でた。
「答え合わせに来た。…どこにすれば良い?」
「私今眠ってるんだよ?質問しないで。」
まずその可哀想なほどに強張った手を解いて、口を寄せた。次に頰に、まぶたに、おでこに。少しずつ柔らかくなる体に、感情を答え合わせする。まつ毛が触れるほどの距離で見つめれば、薄く開いた唇から、フランボワーズが香った。
焦らされ切って、魔法が解けるようにかもめは目を開いた。
キスミー・クイック。
カクテルの名前。
唇に、キスを落とした。
全く、分かりにくいことを。
「待たせたな。」
「全くもう…遅いよ。」
へそ曲がりで怖がりな女が、ゆっくりと背中に手を回した。
Fin