へそ曲がり達のクリスマス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お嬢さんにですか?」
「いや、恋人に。」
「あら、おいくつぐらいの?」
「姉ちゃん、年まで聞かなきゃならねぇのかい?」
「重要なことですわ。年齢によって好みも違いますし。どんな方なのか、もっと詳しくお聞かせくださいます?」
その、何気なく通りがかっただけの店を苦労して探し当て、ドアを叩いて。あまりに迷って決めかねていたら、見かねた若い店員が、声を掛けてきた。年齢から始まり、いつもはどんなファッションを好むのか、好きな映画は何か、好きな花は、誕生日はと根掘り葉掘り訊かれる。
クマのぬいぐるみにそこまでの情報が必要だとは思えなかったが、他に方法もなくて、言われるがままに質問に答える。店員は、不意に、ニッコリと笑った。
「何だ。」
「いえ、とっても優しい顔でお話なさるから…大事に思ってらっしゃるんですね、その方のこと。よく伝わってきます。」
一体自分がどんな顔をしていたのかもわからなくて、急に恥ずかしさがこみ上げて、帽子を下げた。
話を聞いた店員は次から次へとクマをカウンターに並べ出し、迷いが更なる混乱を極めた頃、そのうちの一体がかもめがじっくりとショーウィンドーを眺めていた時のディスプレイと同じクマだと気づく。灰色で、なんとなく不機嫌そうなクマだ。愛想のある他のクマたちとは明らかに違っていたから覚えていた。
カウンター奥の時計を見ると、待ち合わせの時間を少し過ぎていた。律儀なやつだから、きっと既に待っているに違いない。自信はないが、そのクマに決めて、綺麗に包むように頼んだ。
ラッピングとは、なかなか時間のかかるもののようで、店を出る頃には結構な遅刻になっていた。ドアベルのカロカロいう音を背に走り出す。
重たげな空から、ちらちらと雪が降ってきた。早いとこ暖かいところに連れて行ってやらなきゃ、風邪を引かれてしまう。不機嫌にココアを所望するアイツの姿が目に浮かぶ。
ところが、その待ち合わせ場所に、いつも10分も前には到着する律儀なアイツの姿はなかった。
携帯端末にショートメッセージが届いていたことに気付く。
『風邪っぽいので、先にアジトに戻ります。気にせず食事は楽しんで。』
***