キスの練習
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ムカついたので、かもめを肩に抱えて車に押し込んだ。無言でエンジンをかけて車を出す。
とにかくあの会話が筒抜けなアジトから離れたかった。
ワイパーの規則的な音だけが響く。
「…怒ってる?」
何も分かっていないかもめが助手席で小さくなった。
「ああ、怒ってるね。」
「ごめんなさい?」
「疑問形で謝られてもな。」
「だってよくわかんないから。」
「俺はな、お前のこと汚したくねぇんだよ。」
「私が汚して欲しいって言ったら?」
「だからなぁ、お前ね。」
つらっと殺し文句を囁くかもめの耳が、後ろに流れて行く外灯に照らされて、真っ赤に染まっているのがわかった。意味が分かっていない訳じゃないらしい。
アジトから程離れた、ひと気のない場所で、一度車を止める。
相反する思いが自分の中で引きちぎれそうになる。このまま情動に任せてこいつを抱いてしまいたい。だが、傷つけたくない、汚したくない。
「でも、よかったなぁ。」
「何がだ。」
「私、魅力ないのかと思ってたから。こんな形になっちゃったけど、一応女だとは思ってくれるんだね?」
呑気で、しかし消え入りそうなかもめの声に、たまらなくなって、左手を伸ばして頭をわしわしと撫でる。
「変な心配するんじゃねぇよ。」
「…好き。」
「あぁ?!」
「頭、撫でられるの。」
「あぁ…。」
不意打ちの言葉に心臓が早鐘を打った。自分がどのような立ち位置でこいつと接すればいいのか、まるでわからなくなってしまった。
***