キスの練習
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車の前まできて、やっぱりアイツを置いていくことに気が引けた。
「なんだ次元、行かないのか?」
「ああ。」
「…次元、かもめちゃんのこと好きだよなぁ。」
「バカ言え、俺は急にカップ麺が食いたい気分になったの。」
「はいはい、そういうことにしときましょうね。」
ルパンと五ヱ門を乗せて離れていく車を見ながら、そういやこのアジトにはカップ麺の買い置きなんか一つもない、ということに気づいて、軽くため息をついた。
好きかと聞かれれば、やはり好きなんだろうが、男女のそれかと聞かれると、反射的に否定したくなる。
誰か別な男が、あいつにスケベ心で近づいたなら、多分問答無用でぶん殴りたくなるんだろうが。大事にしたい、汚したくない。いつだってこんなどっちつかずな態度だから、不二子の奴にまで「意気地なし」なんて言われるんだ。
とりあえず部屋に戻ろうとして、そういやアイツは寝てるかもしれないと、音を立てないよう静かに階段を上る。静かに部屋に戻り、ベッドに腰掛けたところで、壁の向こうから荒い息が聞こえることに気づく。
よほど具合が悪いのかと一瞬血の気が引くが、違う。この吐息と声色は。
『…はぁ…はぁ……んっ…。』
随分と控えめな声だが、あってないような壁だ。身動きが取れなくなった。一体どうすればいいと言うんだ。自分の顔が情けなく火照っていくのがわかる。どう言うことだよ、こっちの方が恥ずかしいなんて。全く、風邪なんてよく言ったもんだ。
子猫のような声とベッドがわずかに軋む音だけが静かに響く。
『あっーーーー…。』
しばらくその小さな嬌声が続いた後、本当の静寂が訪れた。いよいよ身動きが取れない。下半身は情けなくも反応してしまっている。次の瞬間だった。
ぐうう。
俺の間抜けな腹の虫が鳴いた。
壁の向こうでかもめがびくりと反応するのがわかる。終わった。
『…誰かいるの?』
「…あぁ。」
『…次元ね?』
「…おう。」
『〜〜〜〜〜〜っっっ!!』
しばしの沈黙の後、目の前には壁があるのに、かもめが枕に頭を押し付けて足をバタバタさせる様子がまるで目に浮かんだ。
***