夜明けに白い花束を
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窓のへりに腰掛けた。朝露の残る草地を歩かせて、彼の革靴を汚させてしまったなと少し反省する。空気はひんやりと冷たいけど、日差しは柔らかに暖かい。遠くの草地を歩く小さな彼は、時々もっと小さくしゃがみこんでは花を摘んでいる。
「花束が欲しいな。買ったやつじゃなくて、次元が摘んだの。」
朝も早いので、花はみんな眠っているように閉じてしまっている。そんな中でも早起きして背を伸ばした花だけを選んで、彼は小さな花束を作ってくれている。
愛おしさに胸がフカフカと暖かくなる。こんな気持ちにさせてくれる人、この世に二人と居ない。私だっていつも貰っているのだ。彼から。
「これでいいのか?」
少し呆れたように、彼が手を朝露で濡らして返ってきた。濡れた手に花びらがくっついてしまっている。花の似合わない男だ。私のかわいい人。
「最高。」
受け取って頰に唇を寄せたら、彼はふてたように濡れた土で汚れた手を洗いに行った。私がアジトのひび割れた小さな水がめに花を行けると、なんだか不満そうに壁にもたれた。
「何が欲しかったってんだよ。」
「この花はさ、どっこにでも咲いてるんだよ。」
「そんな安い花を俺から欲しかったのか?」
「違うって。どこにでも咲いてるから、この花を見るたびに、次元が私のために花を摘んでくれたこと、思い出せるでしょう?」
次元は驚いたように、半分呆れたように肩をすくめた。
この花はいずれ枯れてしまうけれど、あなたが腰をかがめて、手を濡らして私に摘んでくれたことは忘れない。
「世界中の花をプレゼントされたようなものだよ。私って強欲なの。知ってた?」
「お前ってやつは。」
彼の、まだ少し湿っている、冷え切った手を頰に寄せた。こんなに手を冷たくして、私に贈ってくれたのだ。
「ありがとう。大好き。」
「お前にゃ、叶わねぇな。」
優しく、少し乾いた唇を寄せられた。ヒゲがくすぐったくて少し笑ってしまう。私の笑い声を皮切りに、冷たい手が体をくすぐった。堪えきれずに声を上げると、外から車のエンジンの音がした。仲間たちが帰ってきたらしい。彼の帽子を乱暴に被せられた。面食らって玄関に出遅れた。
悪者たちの笑い声が聞こえる。
***
「花束が欲しいな。買ったやつじゃなくて、次元が摘んだの。」
朝も早いので、花はみんな眠っているように閉じてしまっている。そんな中でも早起きして背を伸ばした花だけを選んで、彼は小さな花束を作ってくれている。
愛おしさに胸がフカフカと暖かくなる。こんな気持ちにさせてくれる人、この世に二人と居ない。私だっていつも貰っているのだ。彼から。
「これでいいのか?」
少し呆れたように、彼が手を朝露で濡らして返ってきた。濡れた手に花びらがくっついてしまっている。花の似合わない男だ。私のかわいい人。
「最高。」
受け取って頰に唇を寄せたら、彼はふてたように濡れた土で汚れた手を洗いに行った。私がアジトのひび割れた小さな水がめに花を行けると、なんだか不満そうに壁にもたれた。
「何が欲しかったってんだよ。」
「この花はさ、どっこにでも咲いてるんだよ。」
「そんな安い花を俺から欲しかったのか?」
「違うって。どこにでも咲いてるから、この花を見るたびに、次元が私のために花を摘んでくれたこと、思い出せるでしょう?」
次元は驚いたように、半分呆れたように肩をすくめた。
この花はいずれ枯れてしまうけれど、あなたが腰をかがめて、手を濡らして私に摘んでくれたことは忘れない。
「世界中の花をプレゼントされたようなものだよ。私って強欲なの。知ってた?」
「お前ってやつは。」
彼の、まだ少し湿っている、冷え切った手を頰に寄せた。こんなに手を冷たくして、私に贈ってくれたのだ。
「ありがとう。大好き。」
「お前にゃ、叶わねぇな。」
優しく、少し乾いた唇を寄せられた。ヒゲがくすぐったくて少し笑ってしまう。私の笑い声を皮切りに、冷たい手が体をくすぐった。堪えきれずに声を上げると、外から車のエンジンの音がした。仲間たちが帰ってきたらしい。彼の帽子を乱暴に被せられた。面食らって玄関に出遅れた。
悪者たちの笑い声が聞こえる。
***