新しい靴を履いて
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かもめは、新しい靴の履き心地を試すように、植え込みの縁を器用に歩いた。
「良い靴屋さんだったね、ありがとう、次元。」
「あぁ。親子に間違われた以外はな。」
「おっと!」
かもめが転び掛けて、腕を掴む。
「そんなに子供っぽいかな?私。それとも次元が大人すぎるの?」
切なげな微笑みに溜め息が出る。そのまま流れで手を繋ぐ。小さな手。
「…オメーがもう少し大人になって、俺が少し若作りすればな。」
「若作りなんてらしくないよ。今の次元が一番かっこいいのに。」
そうだ、プレゼントがあるの、と言って、かもめは俺の前に立った。
「じっとしててね。」
かもめが懐から取り出したのは、いつの間に買ったのか、夕日を反射してキラキラと輝くネクタイピン。取り付けながら、話し続ける。
「私、もうちょっと大人っぽくなるから、もうすこし待っててね。」
新しいミュールで背伸びをして、頰に、小鳥がついばむような小さなキスをされた。
かもめははにかんで、2、3歩駆け出し、振り返る。
「先に行ってるね!パパ!」
あっかんべー、と舌を出して、アジトの方角へ走り出した。そーゆーところが子供っぽいっつってんのに。
足首についたリボンが走るたびにゆらゆらと揺れて、蝶々みてぇだな、とぼんやりながめていたら癪に障る聞き慣れた声がしてきた。
「あらぁ、追いかけなくていーの?パパ?」
「パパって呼ぶな。…大体お前、そんなに歳変わらんだろう。」
路地裏からひょっこり顔を出したルパンに悪態を吐く。
新品のネクタイピンをしげしげと眺めて、奴は続けた。
「へぇ。ジバンシイのネクタイピン。普段のスーツセレクトから合わせて来るたぁ、かもめちゃん、やりますなぁ〜。」
「俺が貰ったんだ、見んじゃねえ。」
「見たって減るもんじゃあるまいに。」
「テメェに見られると減るんだよ。」
しつこいルパンを手でしっしっと追い払うと、改まって奴は続けた。
「…次元ちゃん、世の中の恋人たちには、プレゼントに意味があるってぇのは知ってるね?」
「腕時計を送ったら、あなたと同じ時を刻みたいっつー意味になる、とかいうあれか?」
くだらない。懐からタバコを取り出し、深く吸い込む。
「そーそー。ネクタイピンには、「あなたを見守っています。」っつー意味があんのよ。」
かもめちゃんらしいねぇ、ピューっとルパンが茶化すように口笛を吹いた。
「そんなの、あいつが意味わかって送ってるかは分からんだろう。」
ふと思い出して、質問を重ねる。
「ルパン、恋人に靴を送るのは何の意味があるんだ?」
「「私の近くから去りなさい、私を自由にして、解放しろ」だったかな。いい意味はないねェ。ま、俺ァおねだりされたら買っちゃうけど。」
頑なに靴を買われることを拒絶したアイツを思い出して笑みがこぼれる。
そういうところが子供っぽい、つってんだ。
「そーそー、ネクタイピンにはもう一つ意味があるんだぜ?」
「なんだ?」
「「あなたはわたしのもの」ってな。」
「けっ…生意気言いやがる。」
煙を短く吐いて、ネクタイピンを親指で撫でた。
「…何か返してやらねぇとな。」
「指輪でも買ってやりゃいいのに。好きなんだろ?次元も。」
「うるせぇな。俺らのペースってもんがあんの。」
「しっかり捕まえとかないと、あんな可愛い子、盗まれちゃっても知らないぜ。」
「言われなくても。誰にも触らせねぇよ。」
Fin