オール夢「お姫様の日」
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いつでも飲めるように、薬を傍らに置いて眠ったら、思いの外寝入ってしまったようで、窓のふちが紫色に染まっていた。いけない、今日の夕飯は私が作る約束だった。飛び起きると、おでこに乗っていた濡れタオルがぺたりと落ちた。一体誰がこんなもの。
ゆっくりベッドの周りを見渡せば、花を生けた花瓶や、お見舞い品のようなカゴに入った大げさなお菓子や果物。お手製のメッセージカードに「早く良くなってね!」と、メッセージとサインが入っていて、犯人がわかる。
「全くもう、ルパンったら。」
随分と手の込んだイタズラをしてくれる。こんな、重病人みたいに。果物のカゴから香り立つ大きな桃を手にとって、キッチンへと向かった。
キッチンには珍しく五ヱ門が立っていた。ソファで煙草を燻らせていた次元がこちらに気がついて、いつものいたずらっ子みたいなニヤリ顔を浮かべた。
「お、お姫様が起きて来やがった。」
らしくも無いキザな物言いに私が肩をすくめると、彼は私が手に持っていた桃をすっと取り上げた。五ヱ門にちょっと、と声をかけて、果物包丁とガラスの皿を取り出す。
「なんだか知らねぇが、今週はかもめちゃんお姫様週間だってルパンにぬかされてな。」
「かもめちゃんお姫様週間!」
あまりの響きに小さく叫んでしまう。
「なんでも、日頃三人のおじさんの世話を焼いてくれる可憐な美少女への感謝週間らしいぜ。」
「可憐な美少女!」
ヒゲの男はククっと喉の奥で笑った。あっという間に桃は綺麗に剥かれて、一口大に切り分けられた。果物用の小さな二股フォークを刺して、ソファに座った私に差し出される。弾けるような甘い香りが辺り一面に広がっている。
「これからは毎月一週間はかもめちゃんに感謝しろってよ。」
「でも、それで行くと、大泥棒感謝週間や、ヒゲガンマンの感謝週間や、お侍さん感謝週間が必要になってくるわね。」
「違ぇねぇな。」
口に運ぼうとすると、そっとフォークを取り上げられた。
「お姫様なんだろ? 俺が食わしてやるよ。」
ニヤリとイタズラっぽく歪んだ口に、嬉しさと苛立ちでため息をついてしまう。
「自分で食べられます。」
「俺のこと嫌いか?」
「意地悪言わないで。」
「ほら、あーん、してみな。」
「ヤダ、もう、エッチ。」
「ゴホン。」
こちらに背を向けたままの五ヱ門に咳払いをされて二人で顔を見合わせる。仕方なく次元の手から桃をかじると、次元は満足げに喉の奥で笑った。五ヱ門に怒られないように、ちっちゃな声で話しかける。
「次元も食べたら?」
「こんな甘いもん食わねえよ。」
「なんかの歌にあったよ。果物がタバコの害を少し防ぐとかって。」
「ほぉん。こいつぁ随分優しいお姫様で?」
「かもめ殿。食前にあまり果物を食べると、食事が入らないのでは?」
再びゴホン、と五ヱ門が咳払いをする。
***