メルモール
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大量に買い込んだ食材や資材をアジトに仕舞い込んで一息ついた。ソファで休憩するかもめの隣で、別の袋に分けていた品物を取り出す。
「これ、なぁに?」
「モナンシロップ。カクテルや菓子に使う、風味付のシロップだ。」
「へえ…なんだかすごい色。水薬みたい。」
「それはブルーキュラソー。」
シチリアの深い青のような液体をウォッカで割る。その美しい青に見惚れて、身を乗り出したかもめの右手が膝に触れた。
グラスを傾けると、子猫のように舌をちろりと出して舐める。
「ん…!何かほんのり柑橘の香り…オレンジピールみたい。」
気に入ったらしく、グラスをそのまま受け取ってちびちびと舐める。
「そっちは?」
「メルモール。蜂蜜酒だ。」
「蜂蜜!」
またしても膝に指が触れる。最早無意識なのだろう。子犬のお手のようで思わず笑ってしまう。
「ちょっと待ってな、お嬢さん。」
買い込んだアイスクリームのカップを少しだけ温めて柔らかくする。ドライフルーツとナッツをを軽く混ぜて、上にメルモールを注いだ。
「わ…もう食べる前から美味しいって分っちゃうね…。」
「好きだろ?こういうの。」
「うん…すき。」
小さなスプーンと手渡してやると、頬をゆるゆるに緩ませてかもめは笑った。もうすでに少し酔っているらしく、頬は赤い。しばらく舌鼓を打って満喫していたが、ふとローテーブルに広げた品物を眺めて、遠慮がちに呟いた。
「…私のために?」
「…ま、お前と酒が飲めるようになったら俺ァ言う事ねぇからよ。」
思わず帽子を下げて答えると、また膝に手が触れる。
「今日はもうネタ切れだぞ。」
「ううん、お酒じゃなくて。」
顔を上げると、甘く柔らかい唇が触れた。不意なことで、しばし呆然とする。膝を指先がくるくるとくすぐる。
「…もっと欲しいんだけどなぁ…。」
どこで覚えたのか。ヘラヘラと緩み切った子供のような笑顔が憎らしい。
「え…?」
お返しにかもめの小さな膝頭を指の背で軽く撫でると、体をピクリと震わせた。視線をぐるぐると泳がせて、再び遠慮がちに唇が触れる。まだ。まだ足りない。
小さく口を開いて、甘い舌先が触れ合う。更に膝を撫でると、くぐもった声が体に響いた。
バタン!
ドアが乱暴に開く音に、慌てて体を離した。
「いくらなんでも日本茶4缶は買いすぎだろ〜」
「あれは新茶だ。この国であの価格…再び巡り合う可能性は低い。」
「…にしたって五ヱ門ちゃん…あれ?かもめちゃんどったの?真っ赤なお顔。」
「い…いや、次元のお酒分けてもらったら酔ってきちゃって…えへへ…ちょ、ちょっと部屋で休もうかな!」
「ほぉん。ほら、ちゃんとお水飲みなよ。」
「う、うん!そうする。ありがとう。」
ルパンから水のボトルを受け取って、ふらふらとおぼつかない様子で部屋に戻って行った。
「ま〜た虐めたんじゃないの?次元。」
「さてな。」
肩を竦めてルパンに答える。
「〜っとに次元はかもめちゃんを弄ぶっつうかさぁ、大人気ないよねぇ。」
「ッハ、弄ぶ、ね。」
弄ばれてるのはこっちの方だ。さっきだってかもめの奴は、器用にルパンから水を受け取りながらも、死角では誘うように俺の膝を撫でてから行ったのだから。
不意打ちに暴れた心臓を、深く被った帽子の下でやり過ごして、弄ばれるままに誘う女の部屋を目指した。
Fin