メルモール
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始まりは些細な事だった。
「ね、少しちょうだい。」
アジトのソファを分け合って座る微睡んだ時間に、読みかけの本を閉じて、俺の左膝に指の先を遠慮がちにちょん、と乗せて、奴は言った。食事に関心が薄く、滅多に物ねだりをしないこいつには珍しいセリフで、ウィスキーに合わせてつまんでいたジャーキーを少し千切ってやると、奴は子犬のように口で受け取って、しょっぱいねと笑う。
それからなんとなく、それは習慣になって。
「どんな味かみせて。」
「ひとくち分けて。」
「ねぇねぇ。」
遠慮がちに、スモークチーズやナッツ、スコッチ、時には煙草をほんの一口。求める言葉はだんだんと短くなって、最終的にはこいつの指が俺の膝の上に乗ることが合図になった。
いつものように膝に指が触れたので、口元に運びかけたグラスを隣に傾けた。今日のウィスキーは辛口だ。舐めた後で奴は渋い顔になった。思わず笑う。
「口に合わなかったか?」
「んん…難しい味。」
「お前そんなに酒好きじゃないだろ、なんでいつも欲しがるんだよ。」
「次元はおいしそうにのんでるから。」
「お前にゃまだ早いよ。」
「お酒はのめる年齢ですよ、だ。」
「無理すんな、飲むなら自分の好みのモンにするこったな。」
「だって、次元がすきなもののこと、分かりたいんだもん。」
笑われて気を悪くしたのか、つらっと殺し文句のようなことを応えてから、頬を膨らませてそっぽを向いた。
***