はみがき
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日、鏡を覗き込むと、腫れはもう随分と引いていた。まだ固形物を噛み締められるほどではないが、柔らかいものなら咀嚼できそうだ。日頃食べたいものを食べたい時に食えることが眩しく思える。
はやく思いきり、とびきり美味いものが食べたい。
朝から寝巻きのままのかもめが、頬の腫れをチェックしにやってきた。順調な回復に満足そうだ。
「次元てさ、メンソ吸わないよね。」
「なんだ、藪から棒に。」
「チョコミントはイケるクチ?」
「あんなん歯磨き粉じゃねェか。」
「…それ、チョコミン党の人に言ったら背後から刺されるからね。」
「何だその党。」
「もしかして、ミント系の味がダメなの?」
「まぁ好きじゃねぇ。」
「じゃあ、今日、私の歯磨き粉使ってみてよ。」
何でまたそんなことを、と問えば、せっかく治したんだからこれからは予防歯科。歯磨きを好きになるとこから始めてみてよ、というのだ。かもめが愛用する歯磨き粉は、当人曰く、おいしい…らしい。
「何だ歯磨き粉に美味しいって。」
「ミントがキツくないし、泡立ち滑らかで口当たりいいの。」
二人で寝癖をつけたまま、並んで洗面台に立って、その曰く付きの歯磨き粉を乗せた歯ブラシを、恐る恐る口に運んだ。
「…。」
「ね?おいしいでしょ。」
確かにミントはキツくない。香りも悪くない、控えめだが、花のような果物のような。…だがダメだ、コレは。とても平生でいられない。
「気に入らなかった?」
「いや、そういう訳じゃねぇが…。」
不安げなかもめに何と弁明したら良いのか。だが、コイツはダメだ。
かもめと唇を重ねた時の香りがする。
***