星屑の砂糖菓子
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜風が涼しい夜だった。彼女はいつも星を見ると言い訳して、男の帰りを待っている。涼しい顔をしているが、そこそこ長い付き合いなので、彼女がすごく心配しているのだとわかる。
仕事の仲間、そして相棒の女。
きっと相棒の女じゃなかったらスルーしていただろうと思う。一見はどこにでもいるただの女の子だ。不二子みたいに特別な色気もなければ、痩せた体に化粧っ気も薄い。ただじっと目を凝らしていると、暗い夜に光る小さな星みたいに、吸い込まれるように目が離せない。
「かもめチャーン、たまには俺とも遊んでよ。」
「いいよ? トランプ?あやとり?人生ゲーム?」
冷え切った滑らかに白い太ももに手を這わせれば、するりと足を組み替えられる。
「わーかってる癖にぃ。男と女が二人でしっぽりやる遊び。」
「今は気分じゃないかなぁ。」
「そんな事言って、気分だった試しがないじゃない。」
口を尖らせると、かもめはフンと鼻を鳴らした。
「そんな口説き方でよく女の子のベッドに忍び込んで来たね?」
「俺様狙った獲物は逃さねぇから。」
「しつこい男は嫌われるのよ。」
かもめちゃんの叱り方が好きだ。俺の方がずっと年食ってるはずなのに、彼女の叱り方はまるで年下の小さな男の子のいたずらを咎めるようで、俺は彼女に優しく叱られたくて、ついちょっかいを出してしまう。
今夜またそんな俺の中のいたずら坊主が起き出して、気がついたら随分下世話な質問が口を突いていた。
「なぁ、かもめちゃん。次元が浮気したらどうする?」
かもめが目を丸くした。が、さほど動揺もせずに首をひねっている。今までそんなこと一度も考えたことがない、とでも言うように。
「浮気も何も…何にも約束した関係じゃないからな…。」
「あんれ、告白とかは?」
「改まっては…してもされてもないかな。私は思った時には言うけど。向こうから聞いたのは、全部お布団の中かなぁ…。」
布団の中じゃあねぇ、と、大人の会話に困ったように二人で笑う。そうね、と彼女は上を向いて続けた。
「どうもしないかなぁ。」
「…はい?」
「どうもしないよ。」
「…かもめちゃん、次元に惚れてんじゃなかったっけ?」
「惚れてますけど。」
意味を汲み取れずに頭を掻いていると、彼女は続けた。
「悔しいし悲しいし嫌だよ?すごく嫌だよ。でも、どうもしない。どうにもできないよ。」
不意に風が木々を揺らした。
「浮気されて、それでもアイツが転がり込んで来たら、かもめは体を開くのかい?」
「さあ、ルパンは次元のこと、そんなに器用な人だと思う?」
俺の方が奴と長く一緒に仕事を共にしているのに、肝を突かれて一瞬言葉を失う。沈黙を縫うように細い煙をすぅと吐き出せば、冷たい空気の中にふわりと溶けた。
「心配しなくても次元よりいい男が出て来たら私、全然、乗り換えるよ?」
彼女の不思議なくらい自信満々な微笑みに、思わず吹き出してしまう。あいつよりいい男はこの世に存在しないってのか。どんだけ惚れてんだ。
「ほぉん? そんなの、今目の前にいるじゃなぁい?」
「ふぅん? 私にはそうは見えないかな?」
「かもめちゃんを抱くには、まず次元を殺さなきゃあなんねぇのか。」
「次元のいないルパンなんて、実質死んでるようなもんだよね。」
「あんれまぁ。随分ひどいこと言うでねぇの。」
「ルパンのいない次元も味がしなさそうだけどね。」
「あんなヒゲモジャ男のどこがいいんだ?」
「結構いいのよ。あのもじゃもじゃは。引っ張ったりして遊べるしね。脇腹をいい具合にくすぐってくれるしね。ルパンのちくちくが痛いお髭と違って。」
冷えた手のひらが不意に頬に触れる。その心地よい温度をもう少し感じていたくて。ぎゅっと握って頰に擦りつけた。
「ルパンの手、あったかいね。」
「いい男の手はあったかいのさ。」
「あら、そんなの初耳。」
しばらく手を握っていた。
これは恋じゃない。恋じゃないが、やっぱりかもめ、アンタはいい女だぜ。俺たちの最高の理解者だ。
ったく次元、こんな子、ちゃんと捕まえとかなきゃダメじゃねぇか。盗めるもんなら盗んでる。
「…冷えて来たね。そろそろ中に入ろっか。」
しっかりと握っていたはずなのに、つるりと手がすり抜ける。もの寂しさに頭の後ろで手を組めば、玄関先に人影が見えて、思わず愛銃に手を掛けた。
玄関先に立っていたのは、噂のヒゲモジャ男だった。
***
仕事の仲間、そして相棒の女。
きっと相棒の女じゃなかったらスルーしていただろうと思う。一見はどこにでもいるただの女の子だ。不二子みたいに特別な色気もなければ、痩せた体に化粧っ気も薄い。ただじっと目を凝らしていると、暗い夜に光る小さな星みたいに、吸い込まれるように目が離せない。
「かもめチャーン、たまには俺とも遊んでよ。」
「いいよ? トランプ?あやとり?人生ゲーム?」
冷え切った滑らかに白い太ももに手を這わせれば、するりと足を組み替えられる。
「わーかってる癖にぃ。男と女が二人でしっぽりやる遊び。」
「今は気分じゃないかなぁ。」
「そんな事言って、気分だった試しがないじゃない。」
口を尖らせると、かもめはフンと鼻を鳴らした。
「そんな口説き方でよく女の子のベッドに忍び込んで来たね?」
「俺様狙った獲物は逃さねぇから。」
「しつこい男は嫌われるのよ。」
かもめちゃんの叱り方が好きだ。俺の方がずっと年食ってるはずなのに、彼女の叱り方はまるで年下の小さな男の子のいたずらを咎めるようで、俺は彼女に優しく叱られたくて、ついちょっかいを出してしまう。
今夜またそんな俺の中のいたずら坊主が起き出して、気がついたら随分下世話な質問が口を突いていた。
「なぁ、かもめちゃん。次元が浮気したらどうする?」
かもめが目を丸くした。が、さほど動揺もせずに首をひねっている。今までそんなこと一度も考えたことがない、とでも言うように。
「浮気も何も…何にも約束した関係じゃないからな…。」
「あんれ、告白とかは?」
「改まっては…してもされてもないかな。私は思った時には言うけど。向こうから聞いたのは、全部お布団の中かなぁ…。」
布団の中じゃあねぇ、と、大人の会話に困ったように二人で笑う。そうね、と彼女は上を向いて続けた。
「どうもしないかなぁ。」
「…はい?」
「どうもしないよ。」
「…かもめちゃん、次元に惚れてんじゃなかったっけ?」
「惚れてますけど。」
意味を汲み取れずに頭を掻いていると、彼女は続けた。
「悔しいし悲しいし嫌だよ?すごく嫌だよ。でも、どうもしない。どうにもできないよ。」
不意に風が木々を揺らした。
「浮気されて、それでもアイツが転がり込んで来たら、かもめは体を開くのかい?」
「さあ、ルパンは次元のこと、そんなに器用な人だと思う?」
俺の方が奴と長く一緒に仕事を共にしているのに、肝を突かれて一瞬言葉を失う。沈黙を縫うように細い煙をすぅと吐き出せば、冷たい空気の中にふわりと溶けた。
「心配しなくても次元よりいい男が出て来たら私、全然、乗り換えるよ?」
彼女の不思議なくらい自信満々な微笑みに、思わず吹き出してしまう。あいつよりいい男はこの世に存在しないってのか。どんだけ惚れてんだ。
「ほぉん? そんなの、今目の前にいるじゃなぁい?」
「ふぅん? 私にはそうは見えないかな?」
「かもめちゃんを抱くには、まず次元を殺さなきゃあなんねぇのか。」
「次元のいないルパンなんて、実質死んでるようなもんだよね。」
「あんれまぁ。随分ひどいこと言うでねぇの。」
「ルパンのいない次元も味がしなさそうだけどね。」
「あんなヒゲモジャ男のどこがいいんだ?」
「結構いいのよ。あのもじゃもじゃは。引っ張ったりして遊べるしね。脇腹をいい具合にくすぐってくれるしね。ルパンのちくちくが痛いお髭と違って。」
冷えた手のひらが不意に頬に触れる。その心地よい温度をもう少し感じていたくて。ぎゅっと握って頰に擦りつけた。
「ルパンの手、あったかいね。」
「いい男の手はあったかいのさ。」
「あら、そんなの初耳。」
しばらく手を握っていた。
これは恋じゃない。恋じゃないが、やっぱりかもめ、アンタはいい女だぜ。俺たちの最高の理解者だ。
ったく次元、こんな子、ちゃんと捕まえとかなきゃダメじゃねぇか。盗めるもんなら盗んでる。
「…冷えて来たね。そろそろ中に入ろっか。」
しっかりと握っていたはずなのに、つるりと手がすり抜ける。もの寂しさに頭の後ろで手を組めば、玄関先に人影が見えて、思わず愛銃に手を掛けた。
玄関先に立っていたのは、噂のヒゲモジャ男だった。
***