暖炉のまわりで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暖炉で薪がぱちぱちと弾ける僅かな音がする。羽毛の布団は軽いのに、私に絡みつく男の腕は重たい。
「大丈夫だよ、次元。部屋はあったかいし、すぐ私も温まるから。休めないでしょう?」
「お前だって俺が冷えて帰って来たら放って置かないだろう。」
「そりゃそうだけど、」
彼は私の身体を絶え間なく撫で摩った。
「悪いな、こんな寒い中。」
「仕事だもん、しょうがないよ。むしろ今日は次元に会えると思ってなかったから、会えて嬉しい。」
「…。」
彼は返事に迷ったように、彼特有の声にならない声で答えた。しばらく沈黙した後で、彼は続ける。
「…もうちょっと居心地よくあっためてやれればいいんだがな。いつかのお前みたいに。」
「私次元のことあっためたことあったっけ?」
「いつだったかの雪山でな。覚えてないか?俺が凍傷になりかけた時、商売道具なんだから大事にしろって、お前、珍しくキレただろ。」
「ああ…うん、そんなこともあったね。」
「お前、いきなり服ん中に俺の手つっこんでよ。」
「あれは…無我夢中だったから。銃が握れなくなっちゃ困るでしょ。」
「助かったぜ。おかげさんでな。」
次元はその時のように私の服に手を入れて、わたしを指先で弄んだ。
「ばか。えっち。ヘンタイ。」
おばかさんの鼻先を摘んで応える。喉の奥に響く笑い声が、私の中にも優しく響いた。凍えていた身体は随分と暖かくなって、すこし解けた彼の腕に頭を預けた。重たくなった瞼の下で、暖炉の灯りをちらちらと反射する優しい目を見つめる。眠りに落ちる瞬間の束の間、彼は私の頬を指の背で撫でながら囁いた。
「なぁ…かもめ…今回、お前の力を借りたくて、呼んだってのもあるけどよ、」
「うん?」
「悪ぃな…俺が、お前に会いたかったんだ。」
そんなの、そんなのってずるい。
そんなにかわいく呼び出されたら、いつだって、どこへだって飛んできちゃうよ、おばかさん。
眠りに落ちた男の腕の中で、私の胸は暖炉の炎みたいにちらちらと熱く揺れて、しばらくは寝付けなかった。
Fin