秋の祭に
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次元の機嫌は口角の下がり具合でわかる。ゴキゲンなときは口角が上にぴょんと跳ね上がっちゃってるし、不安だったり不満だったりすれば、口角は重力に従って顔からこぼれ落ちそうになる。
狸寝入りから本当に寝ちゃったうたた寝から目覚めると、その後者のほうの次元が、私に大入りの飴の袋を無言で手渡した。
「なんなの? …くれるの?」
「いいから持ってろ。」
ずっしりと重たいそれをとりあえず膝の上に乗せて、カラフルなこの飴の成分は一体なんなんだろ、と、呪文のような成分表示を眺めていると、ルパンが颯爽と部屋に現れた。裏地の赤いベルベットのマント。尖った牙は付けたのか。
「とりっくおあとり〜〜とっ!」
「あぁ、そういうこと。」
やっと帽子男の意図が汲み取れて、袋をばりっと開けた。適当に飴をひとつかみ、吸血鬼に扮したルパンの手にぱらぱらと落とすと、大泥棒は至極残念そうに、飴をひとつ口に含んで、残りを懐にしまった。もごもごと口を動かしながら続ける。
「なんだぁ、用意してたのか。」
「ううん、ルパンが来るまで忘れてたよ。」
自分でも飴を口に放った。チェリー味。アメリカ菓子特有の、主張が激しすぎる甘い香りがする。ルパンは肩を落としたまま、椅子に腰掛けて地図を広げた。
「次のシゴトの?」
「ああ。こんどのハロウィンの祭りにな…。」
ルパンはそう言って、時折私のほうを見てくすくす笑いながら、仕事の説明を始めた。
「なに?私の顔、何かついてる?」
「いいや、正確には頭だな」
後ろから柔らかいふわふわの手が頭をぽむぽむと叩くように撫でた。振り向くと、かわいいオオカミのきぐるみ。仕草で次元だと分かる。
「おいルパン、本当にこいつを着なきゃ駄目なのか?動きにくくてかなわねぇよ。」
「仕方ねぇだろ、決行は今夜。コスチュームを新調するほどの時間はねぇよ。」
「…かわいい!」
思わずふわふわの首元に抱きつくと、呆れたように次元がオオカミの頭をスポッと外した。中は随分蒸れそうだ。眉間にしわを寄せたまま、彼は続ける。
「…お前の方がよっぽどな。」
私を首元にぶら下げたまま、姿見の前に移動する。鏡の中の自分には、身に覚えのない耳がついていた。
「ひゃ、いつの間に…!」
ルパンがくすくすと笑っていたことにようやく合点が行く。
「もう、ルパン!」
「かっわいいじゃねぇの。似合ってるぜかもめちゃん。ほら、しっぽと首輪と、衣装があるぜ。」
「これ、私が付けるの?」
ふわふわのしっぽと、ひらひらの短いスカート。鈴のついた赤い首輪。ハロウィンらしいと言えばらしいのだけど、なんだか、とても素面では着れそうにない。
「言ったろ?コスチュームを新調するような時間は無いってな。」
ニンマリと笑う大泥棒に、十中八九初めからこのつもりだったのだと呆れてオオカミと顔を見合わせた。
***