秋の祭に
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「よっこいしょっと…あれ?なんかイチャついてやがんの。」
ルパンが扉を足で開けて入ってきた。手には大きなダンボール。テーブルの上に置いて腰をポキポキと伸ばす。
胸元のかもめは窓の外に顔を向けて狸寝入りだ。先程まで乱れた表情でで迫っていた癖に。だが、真っ赤な耳が隠せていない。
「お前にはこれがイチャついてるように見えんの?」
「イチャつく以外の何物にも見えねっけど?」
「バカ言え。ただのナワバリ争いだ。」
まぁ隠しようが無いので薄々勘付かれているとは思うが、仕事にならないと思われるのは癪なので、仲間の前での戯れは控えるのが俺たちの暗黙の了解だった。もうそういう類のことに照れるような年齢ではないとはいえ、我ながらちょっと苦しい言い訳に頭を搔く。
「何だそのダンボール。」
「ここん家の物置から拝借してきた。次のシゴトで使うのヨ。」
「着ぐるみをか?」
ルパンがダンボールの中の物品を並べていく。
「ここの街がハロウィンに熱心なのは知ってるだろ?」
「仮装か。」
寝たふりのかもめをそっと腹から降ろす。ダンボールの中で埃をかぶったその品物を眺める。どこか間の抜けたオオカミのきぐるみだ。ルパンは裏地の赤いマントを着込んだ。吸血鬼と決め込むらしい。付けた牙を見せてにやっと笑う。
「次の狙いは?」
「魔女の血涙を頂きます。」
「あの曰く付きルビーか。」
「そーそー。そのルビーがくっ付いてる薬瓶の中身が重要なんだけっども。」
「確かハロウィンの博覧会に出品されるっつー話だったな。」
なるほどその博覧会に紛れて頂戴しようって魂胆か。
「お菓子をくれようがくれまいが、イタズラしてやろってな。」
狸寝入りを続けるかもめが気になって視線を向けると、本格的に居眠りモードに入ったらしい。
「かもめちゃんにはこれかなぁ〜っと…。」
ルパンはダンボールの底から奇妙なカチューシャを引っ張り出して、眠りこけるかもめの頭に付けた。
会話がまるで聞こえていないその無防備で小さな相棒に、なんとなく不安を覚えて、俺は重い腰を上げた。
***