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「何ヶ月ぶり?2ヶ月くらい?」
「最後に会ったのは日本で仕事した時だろ。1ヶ月とちょっとってとこだな。」
「日にちにするとそうでもないね。日本にいた時は長丁場だったから余計久々に感じるのかな。」
「向こうに居たときゃそうも思わなかったが、こっちに来ると日本のアジトは狭っ苦しかったな。」
「それはそれで面白かったけどね。みんなお金もなかったし。」
次元にはアイスコーヒー、私はアイスティー。冷えたグラスに水滴がつぶつぶと張り付いて、時折流れて木製の洒落たコースターに吸われていく。
陽の光がいっぱいに差し込む広々としたカフェテラスに向かい合って座った。ルパンや不二子ちゃんには、二人で話すことって何があるのかと聞かれるけど、意外と会話は尽きない。
確かに歳は離れてるし、趣味も合うとは言い難いけれど、仕事や近況の話はもちろん、一緒に見た映画やら、食事のこと、二人っきりだと結構おしゃべりだ。
「私はあまりこだわらないけど、次元って日本の味が恋しくなったりすることってある?」
「まぁ、たまにな。今はどこでも輸入食品が流通してるから、その気になれば困らねぇよ。」
「あ、いいな。私あんまりそういうお店知らない。今度連れてってよ。」
「ああ、そのうちにな。」
今から次元と食材を買いに出かけるところを想像してわくわくしてしまう。緩んだ顔をそのまま向けると、彼は目を細めて頷いてくれた。
「日本食なら何が好き?」
「何だ?作ってくれんのか?」
「作れたらね。」
「日本食だからっていう訳じゃないが…。」
***
日本に滞在した時は、いわゆるルパン一家勢揃い状態で、でも不二子ちゃん以外は、お金がなかった。
すごくリッチな暮らしぶりをしているように誤解されることもあるけど、私を含めた4人は大仕事の前は素寒貧になることは結構ある。小さいアパートの一室を借りて、絵に描いたような貧乏暮らし。
今回私はサポート的な役回りが多かったから、自然と家事方面に徹することになった。私一人で食べる分にはそう苦労はないけど、成人男性が3人もいる家だよ? 激安なスーパーで白菜を買ったりして、私は何だか今までの生活が嘘みたいに思った。下の肥えた3人が、「家庭の味」と気に入ってくれたことが、せめてもの救いだったけど。
「味噌汁って家によって味違うよな。」
次元がモリモリと白米を掻き込みながら出し抜けにそんなことを言った。ある日の夕飯時で、五ヱ門やルパンは出払っていた。私は先に済ませていたので、ケチくさい小さなベランダに蚊取り線香を立てていたところだった。エアコンも満足に動かないのだ、この家。空はすっかり暗いのに、怠け者のセミが鳴いてる。網戸をしめて返事をした。
「そうらしいね。ダシとかお味噌とか。手探りで作ってるから、私のも真っ当な家の味噌汁ではないけど。」
「おまえん家の味噌汁には玉ねぎが入ってんのか?」
「嫌いだった?」
「いや、そうじゃねぇ。」
何だかいぶかしそうな次元の前に座りながら、ダシとかお味噌の比率を弁明するように述べると、次元はそれを聞きながらお椀を片手に小さな台所に入って、また戻ってきた。お椀にはなみなみと味噌汁をお代わりして。
「なに。」
「うまいんだよ、これ。」
顔色も変えずにたくあんを齧りながら食事を続ける次元に、私は真っ赤になった頰を丸いお盆で隠した。
***
「味噌汁。お前のなら、毎晩でもいい。」
「ね、次元。それ、人によってはぷろぽーずのセリフなんだよ。」
***