手のひらのウサギ2
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かもめちゃんは随分熱心に手品を練習した後、シャワーを浴びに浴室へ消えていった。
子供のようにあどけなくも真剣な横顔を思い出してにやけてしまう。センセイとして、小さくてすべすべした手を触り放題だったのだ。役得だったと噛みしめる。当番制の食器洗いをすませるて居間に戻ると、ヒゲの相棒がテーブルに置きっぱなしにされたウサギをいじいじと触っていた。
「何だァ次元、まだいじけてんのか。」
「バカ野郎、いじけちゃいねェよ。一人の女と長く付き合う苦労をお前は知らねェだろうが。」
やっぱりいじけてんじゃねぇか、と突っ込みたくなる気持ちを抑えて向かいに座った。たばこを一本咥えて、相棒にも差し出す。
「そういうお前はねぇのか? かもめちゃんに不満はよ。」
「あるに決まってんだろ、山ほどな。」
「何ナニ?」
「ゴシップ野郎が、教えてやんねぇ。」
「ま、ハタから見れば、かもめちゃんの欠点は天然の魔性ってトコだなぁ。」
不二子は自分の魅力を知り尽くしてコントロールしているが、かもめちゃんの場合は天然でやっている。恋人からすれば、男所帯の此処に置くのは危なっかしくて仕方ないだろう、と察しをつける。
「…悔しいが、違ェねぇ。」
相棒は苦い顔をして煙を吐いた。
「かもめは何て言ったんだ?」
「あ?」
「俺の悪口。」
「っは、その話か。」
テーブルの上のウサギを2羽、向かい合わせに持った。あの時の会話を再現する。
「かもめちゃんだって次元に不満くらいあるだろう、ヤニ臭いとか!」
『タバコの匂いがするのは本当だけど、それは次元の匂いだと思うからそんなに気にならないよ。』
次元はぶーっと吹き出した。
「あんだそりゃ、アイツの真似か?」
「まあ黙って聞けって、次元。…じゃあさっきの意味深な沈黙は何だったんだ?」
『不満なんてあるかなぁ、って逡巡しただけだよ。』
「俺様に嘘吐こうったって100年早いぜ、かもめちゃんが言うまで俺はここを離れねぇからな!」
『わかったわかった!言うから、少し離れて。』
2つのウサギをぎゅっとくっつけてから離す。相棒は呆れたように膝を抱えてじっと見ている。
『次元のこと、時々、困るなぁって思うことはあるの。』
「何が。」
ごく、と小さく相棒が固唾を呑む。
『…かっこよすぎて。』
相棒は声にならない声を上げた。
「…羨ましいぜ〜次元ちゃんよぉ。」
「あいつ…ったく、そういう所だぜ全く…」
「ヘソ曲げてる場合じゃないよなぁ?」
「あぁ、もう、五月蝿い、黙れお前。」
「何盛り上がってるの?」
お風呂上がりのかもめちゃんが顔を出した。
「次、俺が風呂貰うからな。」
顔を赤くした相棒はバタバタと居間を飛び出した。
***