手のひらのウサギ
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両脇のやさしい男たちに、思わず泣きそうになってしまった。
優しくされるとすぐ泣いてしまう。今までこんなに優しくされたことなんかないのだ。
辛い時、それを顕にすれば迷惑がられるのが常だった。耐えて平気なフリをしていることがベストだった。でもこの二人は、まるでちょっとふざけるみたいに、遊ぶみたいに何気なく、私のことを気にかけてくれる。
今まで出会ったどんな善人よりやさしい、悪党たち。
思わず気を使わせたことを謝りそうになって、それじゃだめだと思い直して、溢れて来そうな涙に焦って、数秒口を無意味にぱくぱくさせてしまった。
「…ルパン、次元。」
ん?と、悪巧みを終えた後のニヤニヤ笑いを引っ込めて、二人が私を覗き込む。まじまじと見つめられるのが恥ずかしくて、手のひらのうさぎに顔を寄せた。
「ありがと。」
ルパンがわしゃわしゃと頭を撫でてくれた。くすぐったくて笑うと、次元がほっとしたように続けた。
「そろそろ行くか。」
「行くって、どこへ。」
「うまい飯と、あったけェ風呂と、フカフカのベッドによ。疲れた時にはそれが一番だろ。」
「賛成。」
「俺も賛成。そして三世。」
「ふふ。つまんない洒落。」
「ツマンナイって言う割には笑ってるじゃないの。」
悪党三人と、たくさんのウサギを乗せて、ボロボロのフィアットはまた走り出した。
Fin