手のひらのウサギ
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太陽ですっかりぽかぽかに暖かくなった岩の上に腰掛けて、靴を脱いだ。小川にほてった素足をつけると、あまりの冷たさにぞわ、と全身に鳥肌がたった。温度に慣れてくると、穏やかな流れが足裏をくすぐって心地よい。
少し離れた所で、ジャッキを上げる音が聞こえる。タイヤがパンクしちゃったので、スペアに変える所だった。
仕事が終わって気が抜けたのか、どっと疲れが出てきた。普段に比べれば小さなヤマだったからか、二人は余裕そうで、やっぱり年の功というか年季が違うというか。
普段は一文の得にもならないから、考えないようにしているけど、体調が優れない日はやっぱりすこし弱気になる。
自分はちゃんとこの一味で役に立っているのかとか、足手まといになってないかとか、そんな気持ちがぐるぐる渦巻く。
本当はずっと一緒にいたいけれど、このまま一緒にいたら、心細さで構ってちゃんになりそうで怖い。早く解散して、一人になりたい。
ふわ、とたばこが香って、後ろを見ると、真っ黒なスーツの次元が立っていた。上着を脱ぎつつ隣に座る。
「今日はやけに暑いな。」
「そだね。」
「元気ないな、疲れたか?」
「…うん。」
わしわしと頭を撫でられて、いつもなら嬉しいのに、なんだか素直に受け取れなくて腕を押し返した。
「どうした。」
「今はそういう気分じゃないかも。」
「そうか。」
「うん。」
しばらく黙っていたけれど、次元も私を真似て靴を脱いで、靴下を脱いだ。スラックスの端を折って、水につける。革靴で蒸れた足には余程気持ちよかったんだろう。感嘆の声を上げる。
「あ〜〜。こりゃいいな。」
「おっさんぽい。」
「うるせェ。」
次元がまた一本たばこを取り出した。そのソフトのケースを胸ポケットに仕舞おうとする裾を引く。
「ちょうだい。」
「珍しいな。」
「そういう気分なの。」
くわえかけたたばこを私の口元に持ってきて、ジッポから火をくれた。空気が冷たいのでたばこが美味しく感じる。
「うまそうに吸いやがる。」
「うん、おいしい。」
「全部吸うなよ。」
「なんで?」
「そいつが最後の一本だからな。」
「そうなの。」
次元は私の口からたばこを取り上げて、自分も深く吸い込んだ。既に半分くらいに短くなったマルボロを、再び私に返す。
「もっと燃焼速度が遅いの吸ってくれればいいのに。」
「何だよ、マルボロは好みじゃなかったか?」
「違うよ、もっと長く分け合って吸えたから。」
「そうだな。」
次元が喉の奥で笑った。暑い暑いと文句を言いながら、次元の胸にもたれてちびたたばこを分け合って吸った。
***