続きは満月の夜に
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彼はしばらく静止して口の端をこれ以上ないほど下げていたけれど、私と彼を隔てる椅子の背を退けて、ベッドを軋ませた。言葉の弾丸を切らした丸腰の私の隣に座る。ぎこちなく私の髪を撫でて、私の頭をたばこの香るあたたかい胸板にゆっくりと寄せた。小さい子にそうするみたいに、優しく背中をトントンと叩かれる。これじゃまるで子供扱いだ。彼に迷惑がられるのが怖くて、涙を引っ込めようとするけど、壊れた蛇口みたいにどうにもならない。
しばらく経って落ち着いてくると、ようやく彼が重い口を開いた。
「情けねぇ話だよ。お前にこんなに無理させて。」
返事ができなくて、胸元から彼を見上げると、太い指で私の頬を伝う涙を拭ってくれた。
「どうしたらいいのか俺にも分からなかったんだ。子供みたいに思ってたら、いきなりいい女になりやがってよ。」
いつも言葉少なな彼が、一生懸命言葉を紡いでいる。私のじっと見つめる視線に気づくと、彼は一瞬頭に手をあてて、被っていない帽子を下げようとした。帽子がないことに気付くと、決まりが悪そうに頭を掻く。
「俺の勘違いで、お前の『信頼』を裏切りたくはなかったからな。」
「勘違いなんかじゃないよ。」
離れていく彼の手を思わず握った。全部言わなくちゃと思った。
「私がいい女になったんだとしたら、それは全部次元のせいだよ。」
彼の瞳が揺れる、なんだかちぐはぐな勘違いの答え合わせをしているみたいだ。仕事ならアイコンタクト一つで分かり合えるのに、気持ちのことだと言葉を尽くしても足りない。
「次元にさわって欲しかったの。」
***