続きは満月の夜に
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もう何度も見ている映画なのに、やっぱり少しだけ泣けてしまって、加えて彼の言葉が余韻のように響いて、悟られないように涙を拭うのに必死だった。
本当にどうすれば良かったんだろう、あの女のコは。そして私はどうすればいいんだろう。私のこのささやかな背伸びは、ただの無駄骨だったのだろうか。これ以上近付くということは、かえって彼を失うことなのだろうか。
正しさには縁の遠い人生だけど、自分の唯一の願いが間違いだと思うと、胸がしくしくと痛んでくる。
流れるエンドロールを見ながら、私は再び考えた。
「かもめ。」
不意打ちに名前を呼ばれてどきりとする。そんな私の動揺をよそに、彼は自分の頬をつん、と示して続けた。
「頬にまつ毛が落ちてるぞ。」
「嘘、どこ?」
涙を拭った時に落ちたのだろう、頬をぐしぐしと擦ってみるが、見当違いな場所を拭っていたようで、見兼ねた次元に頬に手を添えられる。近づいた顔に心臓が跳ね上がって、思わず目をそらす。骨張った指にされるがままにしていると、彼は再び口を開いた。
「…お前、泣いたのか。」
「…な、泣いてないよ。欠伸して、涙が出ただけ。」
取り繕うけれど、もう涙がそこまで来ていて、慌てて席を立った。背中に彼の心配そうな視線を感じるけど、顔がもうぐちゃぐちゃになりそうで振り向けない。視界がどんどん滲んで行く。
「…おやすみ。」
やっとそれだけ絞り出すのが精一杯で、私は部屋を飛び出した。
***