火を灯して
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その晩は天が皆の心に寄り添った、そんな明るい月夜だった。
第十班が欠員もなく帰還した知らせを聞き、忍たちは胸を撫で下ろす。
アスマ先生の訃報を聞いたあの日。
すぐにでもシカマルの元へ走りたかった。
けれど班員でもない私がどんな言葉をかけられよう。
今のシカマルに寄り添える自信がなかった。
会うことさえ気が引け、自ずと距離をとっていた。
気の利いた言葉も浮かばない私は彼女として失格だろう。
シカマルも私に会いに来ないということは、そういうことなんだと思う。
自分の存在を過信していたと思い知らされた反面、取り繕った言葉を言わなくて済む…
ホッとするような、複雑な気持ちを抱えて日々を過ごした。
(会いたいな…)
それでもシカマルの顔を見たいと願ってしまう。
頭を振って独りよがりな考えを振り払った。
こんな日は早く寝てしまおう。
ベッドに潜り込み目を瞑る。
静かな夜なのに、自分の身体から生きている音が雑音となり煩く響く。
(困ったな…寝られない…)
明日の予定もないし、いっそ起きていようか…
寝返りを打ちながら迷っていた時、玄関のドアが叩かれた。
「…⚫︎⚫︎、起きてるか?」
「あ…」
シカマルの声だ。
急に心臓が煩く鳴る。
「…起きてるよ」
考えるよりも早く、返事をしていた。
「よかった…少し話せるか?」
ドア越しに聞く恋人の声は、以前と変わらない。
ベッドから急いで出ると、ワンピースを整え玄関へ向かう。
マシな寝間着の日でよかった。
ドアを開ければ、シカマルが立っていた。
「遅くに悪いな…散歩でもどうかなって」
外を指差し、無理にとは言わねェけどよ…と言う。
「…ううん、行こう」
静かな夜道を歩幅を合わせて進んだ。
二人の影が寄り添う。
「…なんだか久しぶりだな」
「そうだね…」
頭をグルグル回転させるが、どうしても気の利いた言葉が出てこない。
「会えなくて悪かったな」
「…大丈夫だよ」
里で見かけた時の、シカマルの悲痛な顔が今も目に焼きついている。
思い出すだけで胸が苦しかった。
「…いのたちは元気?」
「あぁ…アイツらは強いよ」
穏やかな表情でチョウジといのの様子を話す。
少しずつ雑談も交えながら会話は続いた。
「シカマル、もうタバコは吸わないんだね」
この頃何度か見かけた喫煙姿を思い出す。
「あぁ、似合ってたか?」
格好良かったよ、と素直に答えたが形見のタバコに対してその答えで良かったのか急に不安になった。
「まぁ…オレも買ってみたんだけどな」
シカマルは⚫︎⚫︎の言葉を気にもかけず、ポケットの中からタバコを取り出した。
慣れた手つきで一本取り出し、口に咥える。
シカマルの所作は美しく、見惚れてしまう。
火を灯す瞬間、寂しげな表情のシカマルが照らされた。
吐く煙が風に乗って⚫︎⚫︎へと届く。
目に染みて思わず顔が歪んだ。
「⚫︎⚫︎が好きなら吸ってもいいけどよ…」
そう言って咥えていたタバコを口から外し、優しく唇を重ねる。
「っ…」
じっと見つめるシカマルと目が合った。
苦笑しながらそっと唇が離れる。
「…苦いだろ?」
煙の中でシカマルが笑う。
「苦い…」
口内に残る苦味がキスの甘さに勝る。
「だろ?」
笑いながらも、どこか切ない表情に胸が痛んだ。
同じタバコを吸えば、私も淋しさを共有できるのだろうか。
「ねぇ、私にも吸わせて?」
「そりゃダメだ」
「どうして?」
「さっきは格好つけてあんなこと言ったけど、これで最後にするって決めてたんだ」
少しの間を置いてシカマルが言う。
「⚫︎⚫︎と一緒に長生きしてェからな」
「……」
私の好きな人はどうしてこうも愛しい言葉をくれるのだろう。
「…うん、一緒に長生きしようね」
シカマルの手をそっと握った。
短くなっていくタバコを眺める。
先生。
タバコの火が消えた後も、皆の心の灯が消えないように見守っていてくれませんか。
タバコの火を消す音が、闇夜に響いた。
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