深夜のメロディー
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淋しくて眠れない夜がある。
恋人と過ごす夜ならば幸せなはずなのに、どうして胸がざわつくのだろう。
隣で眠るイタチを起こさないように、そっとベッドから抜け出した。
「…どこへ行く」
背中越しに聞こえた声に、内心焦りながら振り向く。
「ごめん…起こしちゃったね」
「眠れないのか?」
「うん…ちょっと笛の練習でもしてこようかな」
「…オレも行く」
⚫︎⚫︎の後に続きイタチも外へと出る。
大きな満月が白く光り眩しさに目を細めた。
座り心地の良さそうな切り株を探して腰掛ける。
⚫︎⚫︎は深く呼吸をしてから、そっと横笛に口付けた。
風に乗って旋律が運ばれる。
木の葉が踊るように揺れた。
イタチは⚫︎⚫︎の姿をじっと見つめる。
(普段の⚫︎⚫︎とは別人だな)
風が肩上で切り揃えられた⚫︎⚫︎の髪をすり抜けた。
月下美人の簪が白く輝き照らされている。
知り合った時からいつも無邪気で明るい恋人だった。
ただ音を奏でる時だけ表情が変わる。
その姿は誰よりも美しいとイタチは感じていた。
いつもと同じ森の中で⚫︎⚫︎の周囲だけは舞台のようだ。
強さと儚さを兼ね備えた姿に心を奪われる。
笛の音の終わりが夜に飲み込まれたとき、いつの間にか近くにいたイタチと目が合った。
「…美しい音色だった」
月夜に照らされたイタチが優しく笑って⚫︎⚫︎の髪を撫でる。
「ありがとう…」
気恥ずかしさに顔を見られないよう肩を寄せた。
「いつまでもこの場所にいられたらな…」
岩隠れから抜けた忍には安寧の地などない。
ここも束の間の拠点だということは分かっているが、居心地が良すぎてしまった。
「あぁ…オレもだ」
優しく唇が触れる。
誰よりも夢を見ていたいと思う。
静かに夏が終わろうとしていた。
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