アンコール
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「無事でよかった…」
「水月もね」
涙目になる水月に優しい声で返す。
⚫︎⚫︎のことを忘れた日なんてなかった。
どこかで無事にいてくれたらと願い続けていた。
神様なんて信じてないけど、今日だけは信じていいかもしれない。
話したいことは山ほどあった。
楽しそうに話す水月を、⚫︎⚫︎は時折相槌をうちながら穏やかに聞いていた。
ふと我に返り自分ばかり話していたことに気づく。
「ごめん⚫︎⚫︎、つい嬉しくて…」
⚫︎⚫︎はどうしてたか急いで聞くと、笑って答える。
「…ねぇ水月。覚えてる?」
「なにを?」
「教えてあげたでしょ」
「あぁ、ダンスのことかな?全然上手くならなかったし忘れちゃったよ…」
「大丈夫、また思い出させてあげる」
「わっ」
水月の手を取りステップを踏む。
繋いだ手から⚫︎⚫︎の感情が一気に流れてきた。
新しい仲間や親しい人との死別…
「⚫︎⚫︎…」
踊り終えた時には目から涙が溢れていた。
「水月、上手だったよ」
⚫︎⚫︎がそっと頬に触れた。
「⚫︎⚫︎、好きだ…」
「私もよ」
おでこを重ね、優しく愛を囁く。
「ごめんね、あまり長居はできないの…」
「また離れるの?」
「…」
沈黙が肯定と取れた。
「嫌だよ⚫︎⚫︎」
「いま伝えた記憶はほんの少し…。でも、私の中で一番大切なのは水月と過ごした時間」
ほらね、また増えたよと微笑む。
「大丈夫、必ず会える」
「…絶対?」
「約束する」
むくれる水月がそっぽを向いて呟く。
「…次に会ったら結婚してね」
「え?」
「それも約束して」
「ふふ…相変わらずだね」
⚫︎⚫︎が苦笑する。
「絶対だから」
「うん、絶対」
またね、と口付けをして去っていく彼女の背中を見送る。
(ボクのお嫁さんだ…)
淋しい気持ちと嬉しい気持ちが交錯する。
(帰るかな…)
気の早いヒグラシが鳴き始めた。
⚫︎⚫︎の声を残しておきたいのに…と、ヒグラシの鳴く方を睨みながら歩くのだった。
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