苛立ち
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「少し様子を見てくる」
君麻呂は激しい雨の中姿を消した。
(一人にしないで…)
⚫︎⚫︎は心の中で呟く。
初めて会ったときから唯一話しやすいのが君麻呂だった。
一つ年上ということもあって、新参者の⚫︎⚫︎を気にかけてくれる優しさが嬉しかった。
去っていった場所をぼーっと見る。
「おい」
その姿を見て多由也が声をかける。
⚫︎⚫︎の肩がビクッと動いた。
「…別に取って食わねーよ。君麻呂がいなくても堂々としてろ、ビチグソが」
「多由也…女がそういう言葉をあんまり……」
「うっせーよデブ。これでも励ましてんだよ」
「…」
困惑している⚫︎⚫︎の様子を、遠くから左近が黙って見ていた。
(…別に泣かしときゃいいじゃねぇか)
メソメソしたやつは殺したくなるが、なぜか⚫︎⚫︎は別だった。
泣き顔を見ると心の奥がゾクゾクした。
しばらく経って君麻呂が帰ってきた。
「雨が上がりそうだ、行くぞ」
その言葉に各々立ち上がる。
「めんどくせーな」
皆が洞窟を出て行く姿を見届けると、君麻呂が⚫︎⚫︎に声をかけた。
「⚫︎⚫︎」
「はい」
静かに差し出す手を見れば、山茶花の花が握られている。
「これは…」
「怖かっただろう、悪かったな」
「…ありがとうございます」
遠慮がちに受け取る。
さりげなく君麻呂が頭を撫でた。
⚫︎⚫︎はホッとして頬が緩む。
「さぁ行くか」
「はい」
微笑む⚫︎⚫︎の姿を、左近は少し離れた場所で静かに見ていた。
