約束の花
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「大分遅くなったな…」
任務の帰り道ゲンマがぼやいた。
生き物も寝静まり夜と一つになっている。
3代目が亡くなり、里は未だ落ち着かない。
皆、休みなく任務に駆り出されて疲弊する日々だ。
(綱手様も人遣いが荒い…)
任務をこなして気がつけば深夜だった。
普段なら急いで帰りたい所だが、今日は別だ。
隣に⚫︎⚫︎がいた。
付き合いだして初めて組む任務だった。
里がこんな状況でもなきゃ、恋人同士のツーマンセルなんて有り得なかっただろう。
わざわざ行きとは違う帰路へ誘い、長い道のりをゆっくりと歩く。
「私も疲れたけど…楽しかったですよ」
穏やかに⚫︎⚫︎が返す。
「任務が一緒で嬉しかったです」
「……それはよかった」
オレと違って⚫︎⚫︎は素直で純粋で、時々言葉に詰まってしまう。
オレもだよ、と心の中で呟いた。
帰路の半分は来ただろうか。
草を踏み締める音が、⚫︎⚫︎とオレでは異なって聞こえる。
軽やかで優しい音に聞こえるのは、キレイ心のせいなのか…
そんな事を考えていると、急に⚫︎⚫︎の足が止まる。
「凄い……」
視線の先を追えば、沢山の紫の花が葡萄のように咲いている。
「へー、こりゃ見事だな」
「藤の八重咲は珍しいですよ!」
嬉しそうに藤棚へ駆け寄る。
普段は7つ下とは思えない落ち着きっぷりだが、こういう無邪気さは年相応だ。
可愛いんだよな…と苦笑しながら、ゲンマもゆっくり後を追った。
「あっちには梅も…!紫陽花も植えてありますね」
⚫︎⚫︎が次々と指差す方を見るが、疎いオレにはどれがどれだかわからない。
「きっと、一年中花が楽しめるんだと思います」
⚫︎⚫︎が続ける。
「藤がこんなに綺麗に咲けるのは、地元の方が丁寧に手入れをされているんでしょうね」
⚫︎⚫︎が枝垂れた藤をうっとりと見上げる。
そんな横顔をゲンマは見つめるが、⚫︎⚫︎は気づかない。
月明かりに照らされた紫の花に、⚫︎⚫︎の白い肌が映えていた。
「あぁ、ほんとにキレイだな」
「揺れるともっと綺麗なんですよ!」
⚫︎⚫︎は“風遁、烈風掌”と呟くと、風で優しく揺らして見せた。
「おぉ…」
さらさらと揺れる藤は圧巻だった。
「…綺麗だな」
「はい」
時々⚫︎⚫︎を見るが視線は合わない。
ずっと花から目を逸らさずに話すので、オレは少し焦ったかった。
「…⚫︎⚫︎がだよ」
束ねた髪にそっと触れる。
キラリと硝子で出来た百合の簪が光った。
「やっとオレを見た」
優しく唇を重ねる。
⚫︎⚫︎は驚いて目を見開いていたが、状況を理解すると委ねるようにそっと瞳を閉じた。
唇が離れるとき、今度は自然の風に乗って甘くほのかな花の香りがゲンマの鼻をくすぐる。
(あぁ、どうしようもなく好きだな…)
髪に絡めた手が、名残惜しくて離せずにいた。
(ここが部屋じゃなくて良かった)
きっと押し倒していたことだろう。
そっと手を離した時⚫︎⚫︎が言う。
「…私も好きですよ」
気持ちを読まれたのかと、一瞬動揺した。
⚫︎⚫︎にキレイに微笑まれれば、それ以上の欲は抑えるしかなかった。
「…なぁ⚫︎⚫︎」
「はい」
「もしオレがいなくなった時、慰霊碑に行くんじゃなくてここに来てくれるか」
「…え?」
「⚫︎⚫︎が悲しむ顔より、キレイな物を見て楽しそうにしてる方がいい」
「……」
複雑な表情をする⚫︎⚫︎の肩を抱き笑って言う。
「…万が一だよ。また来年も来るけどな」
「…はい」
約束ですよ、と⚫︎⚫︎が返す。
あぁ約束だ、とゲンマも言う。
穏やかな時がずっと続けばいいのにと、二人は心の中で思う。
一緒にいる日々がこんなに愛おしいのに、いつか別れる日を思えば心がざわつく。
でも、きっと納得するべきなんだろう。
それでも忍の貴方と歩めるならばいいんだと、心の中で何度も繰り返すのだった。
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