不運自慢
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「ほんとツイてない…」
運を使い切ってしまったのだろうか。
今日は不運の連続だった。
忘れ物に遺失物。
何度躓いたことやら…。
数々の失敗のせいで任務がいつもの倍の時間かかってしまった。
身も心もボロボロだ。
こんな日は一刻も早く寝て、明日を迎えるに限る。
申し訳ないくらい不出来な任務の報告を終えて帰路に着いた。
「あれ、⚫︎⚫︎先輩!」
帰り道、最近よく任務で一緒になる後輩に会った。
「お、いいとこに。聞いてよー」
誰でもいいから吐き出したかった。
今日の出来事を大まかに話す。
「…それはついてないですね」
「そうでしょー」
項垂れる⚫︎⚫︎に、憐れみの顔を向ける。
「…先輩、ご飯でも行きませんか?今日はオレが奢りますよ」
「えっ、いいの?」
「あまりにも可哀想ですし…」
「嬉しい!いいことあったなー」
無邪気に喜ぶ先輩が可愛い。
任務の話もしたかったので、個室がある居酒屋を選ぶ。
…下心がなかったわけではない。
同期と恋愛話になれば、先輩に憧れているやつらで盛り上がっている。
このきっかけで後輩以上の関係になれたらと、淡い期待もしていた。
店に入ると店員が申し訳なさそうに言う。
「すみません、只今混み合ってまして…」
「入れませんか?」
「いや、なくはないんですが…狭い部屋でして」
「⚫︎⚫︎先輩どうします?」
「んー、私は気にしないよ」
通された場所は階段下の空間で、2人で並ぶと肩が触れた。
「…ふふ、ほんとに狭いね」
思わず⚫︎⚫︎は笑う。
後輩からすれば幸運にしか思えず、心の中でガッツポーズをする。
ご飯を食べながら過去の任務の話や、今日の出来事の続きを話した。
「あー、スッキリした。愚痴ばっかりでごめん!私ばっかり話しちゃったね」
申し訳なさそうに⚫︎⚫︎が言う。
「大丈夫です。先輩の話楽しいですよ」
「私も何か悩みとかあれば聞くよ?」
ここぞとばかりに先輩風を吹かしてみた。
いい流れが来た、と後輩は思い立つ。
「うーん、そうですね…。オレ、女性に会うと緊張しちゃって…」
「そうなの?そうは見えないけど」
「いやいや、上手く話せなくなっちゃうんですよ」
「前に彼女欲しいって言ってたもんね、それは困るか…」
どうしたものか…と悩むが、恋愛相談が苦手な⚫︎⚫︎。
一緒に困るだけで、進展がない。
「よかったら先輩、ちょっと練習に付き合ってくれません?」
「私でいいの?」
「ぜひ!」
「いいよ、何したらいいの?」
「うーん、女性に慣れるために手を握ってみてもいいですか?」
「どうぞ」
⚫︎⚫︎の白く細い手にそっと重ねてみる。
「…どう?」
「お、いい調子かもしれません」
「そう?よかった」
疑いもなく微笑む⚫︎⚫︎に、もっと攻めてもよさそうだと確信する。
「次、いいですか?」
「いいよー」
「少し近づいてもいいですか?」
「もう十分近いけど…」
「女性に見つめられるのが苦手なので克服したくて」
「そうなんだ…」
後輩の顔が近づく。
息づかいが感じられる数十センチの距離で見つめられると、⚫︎⚫︎の方が気まずくなる。
「…ねぇ、もう大丈夫なんじゃないかな?」
目を逸らして逃げ腰になれば、後輩がさらに距離を詰めてくる。
「…先輩、逃げないで下さいよ」
⚫︎⚫︎の太ももに手が置かれ、後輩が距離をどんどん詰めてくる。
あぁ好意があったのか、と⚫︎⚫︎は冷静に考えていた。
ここで静止することもできるが散々愚痴を聞いてもらった手前、可哀想かなとも思う。
唇が触れる数センチというところで、水しぶきが飛んだ。
驚いて見れば、後輩がずぶ濡れになっている。
「なにしてんの」
後ろから声がした。
カカシがグラスを持って立っていた。
「カカシ?」
「お前は少し頭冷やせ」
「すみません…」
後輩を置いたまま、カカシに手を引かれて店を出る。
「ハァ…後輩を弄ぶんじゃないよ」
「ごめん…」
弄ばれたのはどちらかというと私だ。
カカシは最後だけ見ていたのだろう。
弁解しても面倒なので素直に怒られる。
(あーあ、ほんとについてない…)
「ねぇ、オレはもう公言したいんだけど」
「うーん…」
カカシが指すのは、秘密裏に付き合っていることだろう。
わざわざ皆に言うのもと思い、⚫︎⚫︎が口止めをして数ヶ月が経っていた。
「なんだか面倒なことになりそうで嫌なんだよな…」
カカシを狙う女性たちが怖いのだ。
「もう面倒なことになってるでしょ」
変な虫もつくし、とカカシは長いため息を吐く。
「うん…」
「あ、わかった。結婚すればいいんだ」
良いことを思いついたと笑顔で言う。
「えっ、また突飛な…」
「婚姻関係を結べば誰も文句言えないでしょ」
「そんな極論を…」
でも、カカシならやりかねない。
こういう話し合いは早めに降参するに限る。
「…わかったよ。皆に話す」
「わかってくれてよかった」
なんだか丸め込まれた気がするが、深く考えないようにした。
家までの帰り道を2人で歩く。
「ねぇカカシ。なんでわかったの?」
店選びは偶然だったはずだ。
「んー?変な虫は全部マークしてるの」
「全部って…」
引き気味に言葉を発する。
「不運は振り切れても、俺はムリだから」
美しく笑う恋人に、⚫︎⚫︎は恐ろしさを感じるのだった。
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